Research Abstract |
本研究では、環境に低負荷で低コストであるバイオマスを用いて,汚染物質を除去・回収する手法を確立して環境浄化に役立てると同時に,金属の吸着剤としての有用性を検討し,レアメタル等の資源の安定供給の課題の解決の一助となることを目指している。本年度では,オオエッチュウバイの貝殻や海藻(褐藻のイソモク,紅藻のベニスナゴ,緑藻のアナアオサ)を用いて、希土類元素(REEs)や放射性核種のウラン(U)、トリウム(Th)を主対象として、取り込みや吸着に関するモデル実験を行った。その結果,主として以下のことが明らかになった。(1)オオエッチュウバイの貝殻は焼成(480℃,6時間)を行うことにより,結晶構造は,アラゴナイト(CaCO_3)からカルサイト(CaCO_3)への変化が確認され,また表面積も顕著に(1/8倍以下)低下した。(2)焼成後,吸着能は若干低下したものの,この貝殻バイオマスは,REEsに関して優れた吸着能を示した。(3)本研究における貝殻バイオマスによる吸着等温線は,REEsについてはLangmuirおよびFreundlich吸着等温線に十分に適応するが,Th,Uについては必ずしも適応しない。(4)通常,廃棄物として扱われる貝殻のバイオマスは,今後,REEsの有用な吸着剤となりうる。(5)褐藻のイソモク,緑藻のアナアオサでは,金属吸着前後で表面形状の変化がほとんど見られなかったのに対し,紅藻のベニスナゴでは見られた。(6)海藻バイオマスによるランタノイド元素の吸着は,LangmuirおよびFreundlich吸着等温線に十分に適応する。特にLangmuir等温線により適合することから,単分子層による吸着が支配的と言える。(7)海藻バイオマスは,REEsの有用な吸着剤となりうる。特に緑藻のアナアオサは,La除去における有望な吸着剤といえる。(8)海藻バイオマスによるランタノイド元素の吸着においては,イオン交換が主要なメカニズムであると考えられる。
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