2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規分子計測法の産業レベルでの廃プラスチック精密識別への展開
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22510092
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
河濟 博文 近畿大学, 産業理工学部, 教授 (10150517)
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Keywords | マテリアルリサイクル / ラマン散乱 / 光熱変換 / 家電リサイクル / 黒色プラスチック |
Research Abstract |
研究目的は、産業界での実用に耐えうるレーザ励起に基づく新規の廃プラスチック識別法を開発することである。そのために、ラマン散乱現象を利用した精密な識別法、光熱変換現象を利用した簡便な識別法、レーザブレークダウン発光法による添加物等の元素検出法につき研究開発を進めた。 ラマン分光法では、毎分100mで移動するベルトコンベア上のプラスチック片に対して3ミリ秒の測定時間で、プラスチックの種類を識別するに十分なSN比で信号が得られる装置を開発した。本年度は特に、高速に移動する物体に対して識別ミスを低くするために、廃プラスチック片の処理量と回収率の依存性、測定時間の効果、デジタル化されたスペクトルの解析方法などについて検討を行った。その結果、実際に家電リサイクル工場から排出された廃プラスチック片から95%以上の精度で選別回収できた。また、スペクトルの歪みを解析し、廃プラスチックの劣化の程度が見積もれる方法を提案した。現在、その検証を進めている。 光熱変換法では、黒い色のプラスチックを対象にその識別が可能か検討した。黒色プラスチック片は可視~近赤外領域において光を吸収し、時間のかかる赤外分光法を除き光学的な方法では実用的な識別ができなかった。レーザ照射による温度上昇を赤外線検出器やサーモグラフィー装置により測定し、その解析からプラスチックの種類が識別できることを明らかにした。しかし、現時点では、コスト面で有利であるがラマン分光法に競合できるほどの精度は得られていない。 レーザブレークダウン法では、高出力のパルスレーザの集光照射によりタルクやタンカルといった添加物中の金属元素が、実用的な感度で検出できることを示した。しかし、産業レベルのリサイクルで最も必要とされている臭素系難燃剤の検出ができていない。現在、その原因を追求している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラマン分光法によるプラスチック識別に関しては当初計画した性能(精度および速度)が達成され、その利用として劣化の程度の判定法につき目処が得られた。一方、黒色プラスチックの光熱変換法による識別では、測定法を色々と提案するに至っているが、実用に耐えるものの開発には至っていない。レーザブレークダウン法による識別では、タルクなど金属を含有した添加剤が検出でき、他の方法ではできない特徴的な識別ができる可能性を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実用面で最も重要な黒色・深色の廃プラスチック識別ができる方法の開発を重点的に進めていく。ラマン分光法と光熱変換法のそれぞれの特徴を活かし、スペクトル同定による精度の高い識別法と簡便で低コストな識別法になるよう研究を進める。ラマン分光法による劣化判定法については、熱分析やGPCにより劣化の程度を確認し、解析方法の改良につき研究を進める。また、レーザブレークダウン法に関しては、臭素系難燃剤の検出ができることを目指し、研究を進める。従来のX線を利用する方法に比べ、精度、コスト、安全性において優れた判定法になると考える。
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Research Products
(5 results)