Research Abstract |
近年のナノサイエンスの発展とともに,ナノメートルサイズで三次元的空間制御が要求されている。とくに,触媒,バイオセンサーおよびガスセンサーの高感度・高精度化を図る上で,金属ナノ粒子や金属ナノロッド等のナノ構造体を均一かつ高密度に分散させる技術の確立が急務である。本研究では,低速イオンビームを用いる独自の方法で,均一サイズの金属ナノ構造体を基板上に規則的に配列させ,高密度に集積化する手法を開発・確立することを目的とした。22年度に作製したパターン化基板(熱酸化SiO_2,透明石英,PET,ポリイミド,黒鉛)上にAu,Pd,AgおよびCuナノ構造体を成長させる。主にスパッタ蒸着と真空蒸着を用いる。これら2種類の蒸着法では,蒸着原子のエネルギーが2~3桁程度異なることから,蒸着法の違いによって,形成されるナノ構造体の形態が異なることが考えられる。また,X線光電子分光装置内のスパッタイオン銃を用いてスパッタ蒸着を行うことで,光電子分光を用いてナノ構造体の成長過程を「その場」で観察することができる。いずれの蒸着法でも期待した基板パターン化の効果は認められなかったが,黒鉛基板において,パターン化の際に基板表面に残留した照射欠陥の影響によるナノ粒子の高密度化を見出した。また,熱酸化SiO_2基板中に低速イオンビームの注入により生成したAgナノ粒子において,極めて規則的な配列を見出すことができた。光電子分光の結果,イオン注入により生成されたAgナノ粒子は,酸化や硫化に対して安定であることが分かった。一方,基板上に生成したAuおよびAgナノ粒子は,実験室大気中での1ヶ月間の放置の結果,主に炭素,塩素,イオウの吸着によって,その光吸収スペクトルが著しく変化することを見出した。さらに,これらの不純物は,低速イオンビーム照射およびアルゴンプラズマ処理により,脱着することが分かった。
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