2011 Fiscal Year Annual Research Report
酸化物内包カーボンナノチューブのNO2検知におけるp-n接合効果
Project/Area Number |
22510115
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
橋新 剛 立命館大学, 生命科学部, 助教 (20336184)
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Keywords | 酸化物内包効果 / 酸化物-CNTの接合界面 / 空間電荷層 / 走査トンネル分光法 |
Research Abstract |
※以降の項目番号((4)~(6))は平成23年度交付金申請書に一致させた。 本年度は、(4)バンドギャップが異なる酸化物の内包効果、(5)酸化物-CNTの接合界面の微細構造観察、(6)走査トンネル分光法(STS)による空間電荷層形成モデルの立証、を目的とした。 (4)SnO_2内包MWCNT、TiO_2内包MWCNTの1ppm NO_2に対する抵抗減少率を調べた結果、TiO_2内包MWCNTの抵抗減少率は約30%(動作温度:150℃)、SnO_2内包MWCNTの抵抗減少率は約40%(動作温度:150℃)であった。抵抗減少率の差は約1.3倍(40/30)であり、この抵抗減少率の差(ガス吸着量の差)はp-n接合による空間電荷層の広がりの差に対応すると考えられる。酸化物固有のバンドギャップは、SnO_2が3.6eV、TiO_2が3.0eVである。バンドギャップの差は1.2(3.6/3.0)倍であり、前述の抵抗減少率の差(約1.3倍)と近いことがわかる。 (5)SnO_2内包MWCNTとTiO_2内包MWCNTの内包酸化物は共にMWCNT内壁の界面で六方晶C(002)面[3.376 A]に沿ってヘテロエピタキシャル成長していることが制限視野電子線回折により明らかとなった。正方晶SnO_2(110)面[3.350 A]およびルチル型の正方晶TiO_2(110)面[3.247 A]がMWCNT内壁に沿って成長していた。内包物がMWCNT内壁に沿って成長し、電気的な接合界面を形成していたことがわかった。 (6)ガス吸着量と空間電荷層の広がりの相関を検証するため、SnO_2,TiO_2,MWCNTの空気中(酸素濃度が比較的高い)、真空中(酸素濃度が比較的低い)でのSTS計測によるI-V曲線から微分コンダクタンス(dI/dV)を見積り、微分コンダクタンスが0であるバイアス電圧の範囲をバンドギャップとして見積もった。MWCNTは酸素濃度が低い真空中において1.16eVであり、酸素濃度が高い空気中において0.89eVであった。この結果はMWCNTがp型半導体であることを意味する。吸着酸素量が少なくなることで、空間電荷層が広がったことを示唆する結果である。一方、SnO_2とTiO_2は酸素濃度が比較的高い空気中で広いバンドギャップを示した。吸着酸素量が増えることで、キャリアである電子が抜き取られ、空間電荷層が広がったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度の交付申請時は走査トンネル分光法(STS)による計測に成功していなかったため、失敗時の対策を述べるに留まっていたが、10ヶ月程度の期間にSTS探針、STS計測用ステージ、STS計測用試料の調製等を鋭意検討した結果、酸化物、MWCNT、酸化物-MWCNT複合体のSTS計測に成功し、本質的な結果を得るに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
[(ア)酸化物単独の粒子サイズ効果] 金属カチオン含有水溶液中で析出した金属を酸化物内包金属と同じ熱処理で酸化物とする。得られた酸化物を溶媒(水系/有機系)に分散し、懸濁液とした後、マイクロギャップAu櫛型電極に滴下、乾燥、焼成を経て酸化物センサ素子とする。ガス中での電気抵抗変化を測定し、酸化物内包CNTにおける酸化物の粒子サイズ効果を明らかにする上での基準とする。 [(イ)酸化物内包CNTの粒子サイズ効果] 酸化物の粒子径分布は、酸化物内包CNTを400K以上の倍率で撮影し、酸化物単独での粒子サイズ効果、CNT内筒内の酸化物の粒子サイズ効果、を比較することで、CNTへの酸化物の内包効果を明らかにする。
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Research Products
(9 results)