2012 Fiscal Year Annual Research Report
ビジネスにおけるリスクマネジメント支援システムに関する研究
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22510137
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
徐 ふぁ 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (40253025)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | リスク管理 / 不確実性 |
Research Abstract |
平成24年度では、オフショアリソースを活用したITプロジェクトにおけるリスク管理について、発注者と受注者の関係性に着目し、いくつかの事例研究を用いて、リスク要因の分類と構造化のためのリスク管理フレームワークを検証した。 また、不確実性やリスクが存在するオンラインショッピングにおけるリスク-センシティブ収益配分問題を取り上げ、プラットフォームであるオンラインショッピングモールとサービスプロバイダである店舗の間におけるリスク-センシティブ最適収益配分について研究した。E-コマースではオンラインショッピングモールはエンドユーザである消費者に課金しないので、市場が生み出す収益は店舗の売上として認識され、オンラインショッピングモールはこの売上を店舗との間で配分する。店舗が消費者に対してより多くの販売努力を行うほど、売上は拡大する。従って、オンラインショッピングモールは店舗が一層の努力を行うようにインセンティブを与え、モールへの収益配分を増やすことを目的としている。 本研究では、この問題を動学的プリンシパル-エージェント・モデルを用いて定式化した。定式化されたモデルがさらにリスク-センシティブ確率制御問題に変換され、オンラインショッピングモールがリスク回避的である場合を取り上げ、リスク-センシティブ最適収益配分戦略が存在することを証明した。オンラインショッピングモールリスク感度の変化が最適収益配分戦略に与える影響についても考察していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長年のリスクマネジメント教育から分かることは一つある。ビジネス現場でのリスクマネジメントは当事者の直感・経験に頼る部分が多い。一方、学術の世界では、リスクマネジメントに関する様々な枠組み、プロセス、分析手法などの研究が多く行われている。しかしながら、これらの研究成果はビジネスの現場ではなかなか浸透しないのは現実である。このような状況を考えて、本研究は、ビジネスにおけるリスクマネジメントの方法・技術・ツール、いわゆる‘架け橋’、をシステム工学の方法論から研究することを目的とする。 本研究で提案したリスク要因の分類と構造化のためのリスク管理フレームワークをオフショアITプロジェクトのリスク管理などにおいて検証した。さらに、不確実性やリスクが存在している両面性市場におけるいくつかの課題について研究成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では、これまでの研究から得られたリスクマネジメントの枠組みを自動車組み込みソフトウェア開発プロジェクトのリスクマネジメントに拡大して応用する。まず、企業訪問・インタビュー調査によってリスクマネジメントの目標体系を構築する。その上、リスクマネジメントの目標体系を評価するための評価属性集合とその測定方法を開発する。組み込みソフトウェア開発のリスク特定用のモデルを構築する。リスクフィルタリングによって、数多くのリスクを一定規模に絞り込み、リスク対応策の作成とその評価を行う。 平成25年度は本研究の最終年度で、これまでの研究から得られた結果を研究報告書に取りまとめる。また、未発表の研究成果を学術誌や国際会議に発表する。
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