Research Abstract |
今年度は,当該研究テーマに関して基礎となる理論的枠組みについて検討し,以下の課題に取り組んだ.(1)複数資産に支払が依存するオプションを個別資産のオプションで最適近似するアルゴリズムを示し,最適化問題や最適解の理論的性質について明らかにした.(2)理論的枠組を拡張するため,原資産の挙動が一般的なLevy過程で与えられる場合について,ヨーロピアンオプションの効率的価格付けやバリアオプションの価格付けに関して検討した.さらに,原資産の候補として不動産価格や原油価格の実証的性質について検討し,バリュエーションの評価を行った. (1)については,まず,一般的な資産価格表現に対して直行射影条件を適用することで最適性の条件を導き,加法モデルにおける最適関数が満たす条件を求めた.また,資産価格が多次元幾何ブラウン運動として与えられる場合について,プットコールパリティを用いた最適関数の性質,感度解析やヘッジポートフォリオ構築における偏微分計算の効率性,および,複数資産のオプション価格を近似する個別資産オプション価格の理論的性質を明らかにした. (2)については,原資産がより一般的なLevy過程で与えられる場合へ拡張するための基礎として,まず,オプションの効率的価格付け手法について検討した.具体的には,ホモトピー解析を用いて,バリアオプション価格を近似計算する手法を構築し,数値例によってその有効性について検証した.また,実証的ではあるが,不動産価格について,用途特化が価格形成に与える影響について考察し,原資産の候補とする場合の不動産価格が保有する性質について検討した.さらに,原油輸入価格の参照値であるJCC価格を原資産とするスワップ価格を,流動性の高い先物価格でヘッジする手法について検討し,多変量GARCHモデルを適用した際のヘッジ効果を検証した.
|