2011 Fiscal Year Annual Research Report
相関のある待ち行列の漸近解析とネットワークの性能評価への応用
Project/Area Number |
22510142
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
三好 直人 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (20263121)
|
Keywords | 定常点過程 / 待ち行列 / 確率幾何モデル / 漸近解析 / 通信ネットワーク / 複雑ネットワーク |
Research Abstract |
本研究の目的は,通信ネットワークの性能評価のために,到着間隔やサービス時間に相関のある一般的な待ち行列モデルの解析を行うことであり,また,これと並行して,複雑なネットワークの性能評価に関する研究を進めることです. 待ち行列の解析については,到着過程が一般の定常マーク付き点過程で与えられ,サービス規範が割り込み後着順と呼ばれるモデルに対して,パルム理論と確率強度を用いた特徴付けを行いました.この成果は海外の論文誌に発表しています. 一方,複雑なネットワークの解析については,まず前年度にブーリアンモデルと呼ばれる確率幾何モデルから構成されるランダムグラフの次数分布に対して漸近解析を行いましたが,これを一般化した空間閾値グラフというランダムグラフを考え,その連結成分が確率1で有限となる条件等を示しました.この成果は国内の研究会で発表しています.また,複雑なネットワーク上で情報を受け取ったノードが,隣接するノードの1つを選んで受け取った情報を転送するという (伝言ゲームのような) 状況を考え,ネットワーク全体に効率良く情報を伝搬させるには隣接ノードをどのように選べば良いかを示しました.この成果は国際会議で発表しています.さらに,空間点過程を用いたセルラネットワークの性能評価に関する研究も行い,海外の研究会で発表しました.これは,相関のある点過程を入力として持つ待ち行列の解析と複雑ネットワークの解析との融合とも言えるもので,待ち行列の解析では1次元であった点過程を空間点過程に一般化し,これがセルラネットワークの基地局の位置を表すものとして確率幾何モデルを解析するものです.既存の研究では,ポワソン点過程を用いた解析が主流でしたが,これを点の位置の相関を考慮したジニブル点過程に拡張しました.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では,一般的な待ち行列モデルの漸近解析を行うために,マルコフ再生過程における極限定理に対応する結果を一般の定常点過程の枠組みに拡張することを計画しておりました.これは,(前年度の報告書にも書きましたが) 一応は達成されたのですが,当初予想していなかった条件が付いてしまったために,そのままでは一般的な待ち行列の漸近解析に適用するのが困難になってしまいました.この条件を外すことに時間を費やしています. 一方で,応用面における通信ネットワークの解析のほうは順調に進み,待ち行列の到着過程における1次元の点過程を空間点過程に置き換えた無線通信ネットワークのモデル化および解析を行っています.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,待ち行列の到着過程である1次元の点過程を空間点過程に置き換え,無線通信ネットワークの確率幾何モデルの解析に重点をシフトしながら研究を進めていきたいと考えています.無線通信ネットワークの確率幾何モデルは,空間待ち行列とも呼ばれ,無線ノードの位置を空間点過程によって表した確率モデルです.既存研究では,待ち行列モデルの分野と同様に,ポアソン点過程を用いた解析が主流でした.これに対して,無線基地局の位置をジニブル点過程と呼ばれる点過程を用いて表したセルラネットワークの確率幾何モデルを考え,性能評価や漸近解析を行う予定です.
|