2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22510153
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田中 敬一 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (00381442)
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Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2014-03-31
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Keywords | レジームスイッチ |
Research Abstract |
多くの資産価格理論では一物一価を仮定するので,価格付け汎関数は線形となるが,流動性に乏しい非完備市場の場合では,現実の価格付けは最早線形性を保っていない.そこで,本研究では,リスク尺度による評価方法を踏襲して,原資産の流動性に関する制約や原資産間の相互依存性を考慮しながら個別資産の評価を再構築することを目的とする.一般的に曖昧さ回避による無差別価格はそのような非線形価格の性質を持っている. 本年度においては,回避したい曖昧さの源泉としてレジームスイッチによる不確実性を考察し,その結果を精緻化できた.昨年度に,経済環境の状態を表す状態変数を規定するパラメータがレジームスイッチする状況における意思決定の問題を無限満期の枠組みで考察し,最適化の条件から,閾値の区間毎に異なる連立2階常微分方程式の導出とその解法を提示したが,その結果をDirichlet問題として一般化・精緻化できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レジームスイッチに関する研究を精緻化できた.曖昧さ回避の導入と信用リスクへの応用を検討する.
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Strategy for Future Research Activity |
リスク尺度を用いた債券等のポートフォリオの非線形価格付けを分析する.後向き確率微分方程式を解くことによって価格が得られるので,単純な仮定のもとで同微分方程式を解き,定性的な結果を得ることを目指す. あいまいさによる価格付けは,数学的には複数の確率測度を用いて最も保守的な価値を見出すことに帰着する.その確率測度(ないしはパラメータ)にあいまいさがあるため,種々の意思決定が変化する.ある時点では最適な投資決定を行なっても,時間が経過して不確実性が部分的にでも解消すると,その決定はもはや最適ではない,という時間的非整合性の問題が生じる.そのことを複数の時点でキャッシュ・フローを生み出す債券について考察し,債券ポートフォリオの場合に拡張する.銀行の資産の多くを占める債券や融資のポートフォリを組成するための留意点としてまとめるよう研究を進める.
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Research Products
(6 results)