2011 Fiscal Year Annual Research Report
注文フローと板ダイナミクスの分析とマーケット・メーキングによる株価安定化策の提案
Project/Area Number |
22510156
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中島 義裕 大阪市立大学, 経済学研究科, 教授 (40336798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 直樹 大阪府立大学, 工学部, 准教授 (90295717)
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Keywords | 人工市場 / オーダーフロー / シミュレーション工学 |
Research Abstract |
ファーマーらは、成行注文、指値注文、キャンセルの各到来確率と平均注文数量から、bit-askスプレッドや価格変動の拡散係数が決定できることを示した。しかし、東証上場株式のオーダーフローと価格変動を調べると、上記注文の到来確率は大きく変動している。そこで、これらの到来確率を個別銘柄の固有の統計量として扱うよりも、時々刻々と変化するそれらの値を、市場の状況を「安定期」と「不安定期」に区別するための指標として扱う方が良いと考えた。具体的には、価格が上昇している際には、最良気配値の売り指値注文の到来確率から、売り注文のキャンセルの到来確率を差し引いたものよりも、成行の買い注文の到来確率の方が高い。逆の場合は、価格が最良気配値で固定し安定的である。 これらの仮説に基づいて、オーダーフローの確率モデルを作成した。このモデルでは、上記の安定期と不安定期を分ける指標が内生的に変動するが、その移行が極めて速やかであり、全体として市場価格は激しく変動する。 これと平行して開発を続けてきた人工市場U-Martシステム上で、実際のオーダーフローに基づいた実験を行った結果、そのような激しい変動は見られないことが分かった。これらの成果は、計測自動制御学会論文集に掲載している。 しかし、我々が作成したモデルの変更が余儀なくされたため、実証研究やオーダーフローモデルの研究成果については、まだ発表に至っていない。そのため、平成23年度は成果報告のために計上していた旅費や英文校閲費を支出するかわりに、データ管理やシミュレーションを行うためのPCを購入した。価格データを加工するために必要な情報を入手するため、会社の財務データ(四季報)を購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
おおむね研究計画に沿った研究を行ってきたが、昨年行った実証研究により、これまで我々が考えてきた以上に、市場の価格変動が安定的であり、我々が作ってきたモデルとの間に齟齬が生じた。これは、むしろ研究の進展による新たな発見に属する者であると考えられるが、これにより昨年中に発表を予定していた論文のいくつかは、まだ公開に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
実証研究の結果を、新たに解釈し直すと共に、モデルの改良を行って一定の成果を示したい。特に、研究計画を変更する必要は無いと考える。
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Research Products
(5 results)