2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22510193
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石井 吉之 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (40222955)
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Keywords | 融雪洪水 / 降雨 / 積雪ライシメーター / 模擬降雨散水実験 |
Research Abstract |
降雨と融雪が重なると著しい河川洪水が起きる。あたかも降雨が融雪を加速させて洪水となったかのように見えるが、実際には雨が雪を融かす量はさほど大きくない。ではどうして洪水になるのか。積雪内部における降雨浸透水の挙動が鍵となるが、雨は積雪内を素通りして地面に到達すると言う研究もあり、国内外の研究者の間で見解が分かれている。何よりもまず、実際の観測例が少ないことが壁となって、この現象の理解が進まず、治水対策面でも懸案になっている。本研究では、積雪水文試験地における詳細な現地観測とともに、水の安定同位体をトレーサーとした雪面上への降雨散水実験などから、マーキングされた水の動きを追跡することにより、積雪内での水貯留の実態、およびそれらと河川洪水との因果関係を解明することを目的とした。 現地観測は北海道北部の北大雨龍研究林内の実験地(母子里)で行なった。平成23年の融雪期を集中観測期間とし、降雨前後の積雪構造変化を知るための積雪断面観測や同位体分析用のサンプリングを頻繁に実施した。また、積雪表面に供給された降雨によって、積雪重量がどのように変化し、積雪底面からどの位の水が流出し、それによって河川がどの程度増水したかを連続的に自記測定した。さらに、融雪観測室前の露場において、雪面上に著しい大雨があった場合を想定した模擬降雨実験を、降雨継続時間がそれぞれ1時間、3時間、6時間の場合について行なった。3回目の実験では1平方mの雪面上に6時間かけて200Lの模擬降雨を散布した(総雨量200mmの降雨イベントに相当)が、積雪底面からの流出水はほとんど現れなかった。このことから、雪面上に多量の水が供給されると、積雪内における水平方向の水の流れが予想以上に顕著になることが分かった。 得られた成果の一部は国内の水関係学会(日本雪氷学会、陸水物理研究会、日本水文科学会)で発表し、総説論文も投稿中(査読中)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度を研究環境の整備にあて、平成23年度及び24年度の融雪期を集中観測期間に設定した。22年度には最も重要な積雪ライシメーターの設置と、足場パイプや底面の排水路を造作し、散水実験用施設を作成した。23年度には降雨強度を変えて3回の模擬降雨散水実験を行ない、ひと通りの実験結果が得られ、国内の関係学会で成果を発表することができた。24年度には更なる実験の積み重ねを行ない、23年度の結果と併せて結果をまとめる予定であり、概ね当初の計画通りに研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り今年も4月から現地での観測研究に入る。しかし、研究の生命線とも言えるデータ通信機器に不具合が生じ、その対策用に新たな測定システムを導入したため、当初予算以上の経費が掛かってしまった。今後はもう少しトラブルに強い観測システムを構築する必要がある。
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Research Products
(6 results)