2010 Fiscal Year Annual Research Report
架橋反応の頻度で測るクロマチン構造と幹細胞研究への応用
Project/Area Number |
22510219
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
石原 悟 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (00300723)
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Keywords | クロマチン / ヌクレオソーム / SEVENS法 / ホルマリン |
Research Abstract |
本研究代表者が開発したSEVENS法は、クロマチン内のヌクレオソームの局所的密度を、ホルマリンの架橋頻度で推定するものです。この方法をマウスT細胞に応用した場合、ホルマリン濃度は0.75%で良好な結果が得られていました。今回、ヒト培養細胞に対しSEVENS法を用いるにあたり、その反応条件の検討を行いました。ヒト胎盤絨毛由来のJEG3細胞はマウスT細胞に比べてサイズが大きく、細胞あたりの蛋白質量は多いと考えられました。そこで、T細胞と同様の架橋条件がヒト培養細胞で再現されるにはより高濃度のホルマリンが必要とされると考え、0.8、0.9%と濃度をふってSEVENS法を試行しました。その結果、クロマチン構造がオープンな領域は期待されたとおり上部画分に濃縮されたものの、クローズな領域は下部画分にみられませんでした。これらの領域の分布を詳細に解析したところ、その多くが不溶性画分として遠心チューブの底に沈殿することが分かりました。つまり、高濃度ホルマリンによる架橋反応は、一部のクロマチン(特にクローズされた領域)を選択的に不溶化させるため、その処理によるサンプルの生化学解析を困難にすることが分かりました。そもそも、広く用いられているクロマチン免疫沈降(ChIP)法は通常1%で行われている場合が多く、可溶化されている画分のみ用いられるため、不溶性画分には着目されてきませんでした。しかし、今回得られた知見によると、ホルマリン架橋反応後に抽出されるクロマチンにはバイアスが掛かっており、比較対象の遺伝子間での免疫沈降の条件が必ずしも同じでないことを示しています。したがって、可溶化反応を含めたより詳細な条件検討が、SEVENS法のみならず、ChIP法の改良につながると考えられます。
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