2011 Fiscal Year Annual Research Report
架橋反応の頻度で測るクロマチン構造と幹細胞研究への応用
Project/Area Number |
22510219
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
石原 悟 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (00300723)
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Keywords | クロマチン / ヌクレオソーム / SEVENS法 / ホルマリン |
Research Abstract |
転写因子の結合に影響するヌクレオソームの凝集は、遺伝子の転写活性を判定する上で重要な要素です。このクロマチン構造を調べる方法として、最近、本研究代表者は、マウスT細胞に対してホルマリンによる化学架橋の頻度でヌクレオソームの局所的密度を測る方法を開発しました。ただし、前年度までの研究において、SEVENS法と呼ぶこの方法をヒトの異なる組織由来の細胞株(HepG2、KGN、JEG-3、HeLa細胞)に応用すると、0.75%ホルマリンという同じ条件にもかかわらず細胞によって架橋効率が異なること、さらに、一部のクロマチンが不溶性になることを見出しました。そこで、当年度では、SEVENS法の汎用性を向上させることを目的に、クロマチンの可溶化の条件検討、及び、データの表現方法の再考を行いました。ホルマリン架橋後のクロマチン溶解の改善には、1%SDSを含む液を添加後に2時間37℃で保温する過程を新たに加えました。その結果、4種類のヒト細胞株いずれにおいても、およそ95%のクロマチンが上清へと回収される良好な可溶化条件が得られました。その一方で、各細胞の密度勾配遠心によるクロマチンの分画パターンは同様でなく、特に、KGN細胞では、軽いクロマチンが濃縮する筈の上部画分に低分子から高分子までのDNAが広く集まる傾向が見られました。未架橋のDNAが分子量の大小にかかわらず上部画分に見られることから、KGN細胞のクロマチンは0.75%ホルマリン処理で部分的に架橋されるに過ぎないと思われます。したがって、架橋状態の異なる細胞間で構造を比較するには内部標準が必要と考えられたので、いずれの細胞においても高い転写活性を持つ疎なクロマチンと低い転写活性の密なクロマチンの標準となる遺伝子座を設定しました。この結果、SEVENS法を用いての任意遺伝子座のクロマチン構造の細胞間比較が可能になりました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に明らかになった問題点であるクロマチンの溶解度が、37℃の保温で期待通り改善されました。また、架橋効率の相違により細胞間で直接クロマチン構造が比較できなかった点も、内部標準の設定でクリアされました。この改良版SEVENS法により、今後の研究が滞りなく進められると思われます。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、4種のヒト細胞株(HepG2、KGN、JEG-3、HeLa細胞)を用いて、クロマチン構造と転写の関係を明らかにする実験を準備しています。異なる組織由来のこれらの細胞株から得られるデータの相互比較は、分化過程におけるクロマチン構造変換に起因する転写プロファイルの変化を説明する良い事例になると考えられます。そもそも、この変化過程こそが幹細胞の分化と捉えることができるので、これらの具体例の蓄積を足掛かりに幹細胞研究へと進める予定です。
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