2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22510226
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
芦原 坦 お茶の水女子大学, 名誉教授 (00017211)
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Keywords | 植物 / 生理学 / 代謝 / 分解 / 生合成 / 酵素 / 細胞組織 |
Research Abstract |
交付申請書に記した以下の2つのことがらについて調べた. 1)植物のピリジンヌクレオチドサイクルの多様性の解明 本研究では、モデル植物の他,有用植物であるジャガイモやチャなどの植物を主な材料として,植物におけるピリジンヌクレオチドサイクル(ピリジンヌクレオチドの分解経路とサルベージ経路から構成される)を詳細に調べた.パルス・チェイス実験からジャガイモ塊茎やチャ葉では,ピリジン環自体の分解が見られたが,この分解系は,ニコチン酸グルコシドから開始し,グルタール酸を経由することが明らかにされた.植物のピリジンヌクレオチドサイクルには,7つの代謝物からなるPNCVII(NAD→ニコチンアミドモノヌクレオチド→ニコチンアミドリボシド→ニコチンアミド→ニコチン酸→ニコチン酸モノヌクレオチド→ニコチン酸アデニンジヌクレオチド→NAD)が基本であるが,植物には,ニコチンアミドリボシドデアミナーゼやニコチン酸リボシドキナーゼを経由するバイアスがあることもわかった.これらのバイパスは,哺乳類では知られておらず,植物に特有なものと思われる.今後,それぞれの植物種,器官によるピリジンヌクレオチドサイクルの特異性を考慮し,その代謝生理学的意義や調節機構を調べる. 2)ピリジンヌクレオチドサイクルに派生する二次代謝と分解経路の解明 植物種により,ニコチン酸由来の二次産物が合成される.主要なものはトリゴネリンとニコチン酸グルコシドである.50種以上の植物種で,ニコチン酸の二次代謝を検討した結果,多くの植物では,トリゴネリンが合成されるが,シダ植物と一部の被子植物では,トリゴネリンは合成されず,ニコチン酸グルコシドが合成されることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
植物のピリジンヌクレオチドサイクルに関与する酵素として2つの今まで報告されていなかった酵素を発見したこと,今まで,キク亜綱などの植物にのみ見られるとされていた,ニコチン酸グルコシドの生合成系が,シダ植物に分布しているなど予想外の新たな知見が得られたこと.
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Strategy for Future Research Activity |
ピリジンヌクレオチドサイクルとニコチン酸抱合体合成の多様性について,本年度までに得られたデータを整理し,それらの特徴から,さまざまな植物種,器官におけるその代謝生理学的意義についてさらに詳しくしらべる.
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Research Products
(3 results)