2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヘムオキシゲナーゼに見る環境変化の下での生存戦略_活性微調節機構の解明
Project/Area Number |
22510232
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
右田 たい子 山口大学, 農学部, 教授 (90159161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
右田 耕人 山口大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (90116757)
小崎 紳一 山口大学, 農学部, 教授 (40280581)
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Keywords | ヘムオキシゲナーゼ / 環境応答機構 |
Research Abstract |
1.陸棲動物(ラット)と水棲動物(フグ)由来HOの反応性の比較を、pHの異なる溶液で比較した。これらHOへのin vivo電子供与体であるシトクロムP450還元酵素との共役反応で、酸性側でも塩基性側でもフグの酵素の方がラットの酵素より明らかに高い活性を示した。特に塩基性側では、ラットHO1が失活するpH9以上でもフグHOの活性は最大活性の8割程度を示し、アルカリ条件下での耐性の強さが顕著であった。 2.還元酵素共役ヘム分解反応でのpH依存性の違いの原因を、タンパク-タンパク相互作用の面から既報のタンパク構造をもとに考察した。その結果、相互作用の主要因である表面電荷分布に違いがみられ、フグの方が相互作用部位に塩基性アミノ酸が少なく、これが塩基性環境に対する耐性が強い要因の一つであることが示唆された。 3.蛍光検出型酸素電極を用いて、酸素濃度の異なる溶液下で、フグとラット由来のHOのヘム分解速度を比較した。25℃での酸素飽和緩衝液中での反応は両者に大きな違いは見られなかったが、15%低酸素濃度条件ではラットHO1の活性が90%以下に減少したのに対して、フグ酵素では全く活性の低下は見られなかった。また、反応による反応液中の酸素消費量もフグ酵素の方がラット酵素の2/3ほどであり、フグHO1では酸素の効率的な利用が行われると予想された。 4.ラット、フグ、ダイズ、シアノバクテリア、髄膜炎菌由来のHOについて、ヘム-HO複合体の酸素結合型のヘム自動酸化速度を比較し、活性との関係を考察した。その結果、ラットのHO1が最も自動酸化が遅く、酸素化型の寿命が長いことがわかった。結晶構造が既知のラット、シアノバクテリア、髄膜炎菌HOでヘム近傍のアミノ酸残基の配置を比較した結果、自動酸化速度が速い酵素ほどヘムポケットで、ヘム鉄に配位した酸素を安定化する水素結合が弱いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究年度の2年目では、特に異種生物種由来HOの酸素濃度変化の実験を中心に行った。溶存酸素濃度を目的の値に調節する反応系の構築に手間取ったが、再現性のあるデータを取得できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度および今年度にはフグとラットとの比較を集中的に行い、ヘムポケットの違いがヘム分解過程のどの部分にどのように影響を与えているかがわかってきた。最終年度では、ヘム分解活性を支配するいくつかの要素が、ダイズやシアノバクテリア、髄膜炎菌においても同様にかかわっているかの検証を行う。
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