2011 Fiscal Year Annual Research Report
侵略的外来種アルゼンチンアリ侵入に伴う生態リスクの真実と嘘
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22510246
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
伊藤 文紀 香川大学, 農学部, 教授 (50260683)
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Keywords | 生物多様性 / 外来侵略生物 / アルゼンチンアリ |
Research Abstract |
侵略的外来種アルゼンチンアリは、在来アリをはじめとする多くの在来生物と在来生態系に著しい悪影響を及ぼすと喧伝されているが、アリ以外の生物に及ぼす影響に関してはいまだに不明な点が多い。そこで、本研究では、広島県廿日市市周辺の市街地公園のうちアルゼンチンアリの侵入年度が明らかな公園において、地上歩行性節足動物相、管住性ハチ相、訪花昆虫相の野外調査を実施した。また、昨年度の結果よりアルゼンチンアリ生息地で密度が低下していたニホントカゲについて、餌にアリ類が含まれているかを知るために捕獲して脱糞させ、糞内容物を調査した。実験室内では、アルゼンチンアリおよび在来アリが主要な地上歩行性動物に対して示す行動を観察した。主な結果は以下の通り。(1)地上歩行性節足動物相を、篩いがけ等で調査したところ、昨年度の粘着板トラップでの調査結果と同様に、オカダンゴムシやコオロギ類各種、多足類、甲虫類などがアルゼンチンアリ侵入地であっても多数採集された。これらの動物類の一部をアルゼンチンアリとともに飼育したところ、オカダンゴムシや多足類に対する攻撃的な行動は少なく、むしろアリの方がこれらを避ける傾向が観察された。(2)各地の公園に竹筒トラップを設置し管住性ハチ相を調査したところ,ハチが巣として利用していたトラップ数には侵入地と未侵入地間で明らか差はなかった。侵入地で防蟻剤によってアリを除去した場合は、除去しなかった場合よりもわずかながら営巣トラップ数が増加し、軽微ではあるがアルゼンチンアリの活動が管住性ハチ類の営巣活動を抑制している可能性がしめされた。(3)訪花昆虫相については、調査時に開花植物が少なかったため、十分な資料を得ることが出来なかった。(4)ニホントカゲの糞中にアリ類は含まれていなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
野外調査と室内実験でアルゼンチンアリがアリ以外の生物に及ぼす影響が明らかにされつつあるが、天候や日程の関係で野外調査をタイムリーの時期に出来ない場合があったため。
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Strategy for Future Research Activity |
野外調査と室内実験を通じてアルゼンチンアリがアリ以外の生物に及ぼす影響を引き続き明らかにする。昨年から調査地周辺で薬剤を用いた一斉防除が実施されており、本研究結果を解釈する上で防除状況を知る必要があるので、これらの情報収集も行う予定である。
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Research Products
(1 results)