2011 Fiscal Year Annual Research Report
食物網構造をベイズ推定する安定同位体混合モデルの開発と検証
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22510249
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
角谷 拓 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 研究員 (40451843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧本 岳 東邦大学, 理学部, 講師 (90453852)
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Keywords | 生態系 / 生物多様性 / 群集生態学 / 安定同位体 / 食性分析 |
Research Abstract |
近年、炭素や窒素、あるいは硫黄の安定同位体比から、食物網構造を探る試みが盛んに行われている。例えば、基底種(一次生産者)と最高位捕食者の窒素安定同位体比を比較することによって、食物連鎖長(食物網の高さ)を推定することができる。しかし、食物連鎖長を推定するだけでは、食物網の内部構造を明らかにできない。一方で、ある特定の消費者とその餌種だけに注目した場合には、消費者と餌種の安定同位体比から各餌種の貢献比率を統計的に推定する方法(混合モデル)は既に確立している。しかし、従来の混合モデルでは食物網の全体構造を定量的に推定できない。 そこで本研究では、胃内容分析や糞分析、文献調査等から得られる食物網構成種の間の食う-食われる関係の有無を0(無い場合)と1(有る場合)で記述した二値食物網データと、食物網構成種の安定同位体比データを取得することによって、その食物網における全ての消費者について異なる餌資源の貢献比率を同時に推定するベイズ推定モデルIsoWebを開発した。従来の混合モデルでは、餌種の安定同位体比の事前分布が無情報(試料の値だけに依存する)と仮定されている。これに対してIsoWebには、この事前分布が餌種の餌種(餌種が消費する餌資源)の安定同位体比によって規定されるというプロセスが明示的に組み込まれている。さらに、仮想食物網データを用いたIsoWebの検証の結果、幅広い食物網の条件において(種数:10~30、結合度:0.05~0.3、サンプル数:5~50)、高い精度で貢献比率の推定が可能であることが示された。 また、複数の止水域において水生昆虫を中心とする群集からサンプリングを収集し炭素および窒素の安定同位体比を計測し、IsoWebを用いて解析を行った結果、止水域の周囲の土地利用環境によって群集の栄養段階が変化することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りモデル開発が完了し、結果を国際誌に発表する目処が立っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した解析モデルを、海洋、森林など様々な生態系における群集データに適用しその有効性を示す。
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