2011 Fiscal Year Annual Research Report
砂浜沿岸域における小型甲殻類の生産構造の空間的変異
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22510252
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
高田 宜武 独立行政法人水産総合研究センター, 日本海区水産研究所・資源生産部, 主幹研究員 (30372006)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山平 寿智 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (20322589)
村上 拓彦 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20332843)
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Keywords | 生態系保全 / 環境分析 / GIS / 海洋保全 / 海洋生態 / 個体群 / 生活史 / 景観生態 |
Research Abstract |
新潟市を中心に村上市から柏崎市までの砂浜54地点の汀線域において得られた小型甲殻類の生息状況データのうち、ナミノリソコエビの生息状況を5段階で評価した。調査地のある42の砂浜について生物の分布に影響を与えると思われる地形要因として、向き、人工護岸の有無、砂浜長、隣接する砂浜までの距離、河口の有無、河口までの距離、砂浜1kmバッファ内の水深帯面積比率(0-5m、5-10m、10-15m、15-30m)、同バッファ内の水深の平均・その標準偏差・海底傾斜を求めた。また、海況要因として水温(4季節と年間)およびクロロフィル量(4季節と年間)について衛星画像(Terra/MODIS)を用いて各砂浜から5kmバッファ内の値を抽出するとともに、生物調査時に測定した汀線域の傾斜・水温・塩分・溶存酸素を現場要因として解析に供した。これらのデータをもとにナミノリソコエビの生息状況を累積ロジットモデルで解析したところ、現場要因の貢献は無視することができ、地形要因と海況要因のなかから有効な変数を選択することができた。その結果、砂浜地先の水深帯が広く春夏期の水温が高い砂浜で良好な生息が推定され、河口近辺と孤立した砂浜ではあまり良くないという傾向が認められた。砂浜汀線域の生物について炭素と窒素の安定同位体比分析を行ったところ、ヒメスナホリムシはナミノリソコエビよりも栄養段階が高く、肉食傾向が強いことが判明し、これは河川水の影響の異なる立地を示す砂浜でも同様の傾向であった。また、ミトコンドリアDNAによる遺伝的集団構造解析のため、日本海沿岸各地の砂浜よりナミノリソコエビのサンプルを収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初に想定していたように、日本海沿岸:の砂浜汀線域のナミノリソコエビを主とする小型甲殻類の生産構造は、新潟市近郊という比較的狭い地域内でも相当の変異を示すことが明らかとなった。生息状況の空間的変異に影響を与える地形と海況に関する要因を抽出することが可能となり、沿岸域の研究におけるGISの活用ノウハウを蓄積できた。これらのうち得られた成果の一部は論文としてまとめ、現在投稿中である。以上のように、研究は予定通り進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる本年度は、前年度までに得られた生物の分布やサイズ組成などの個体群構造と生産構造の解析を進め、GISにより抽出された砂浜の立地変数との関連を導きだすとともに、個体群を存続させるために必要な砂浜の立地条件を抽出する。そして、砂浜生態系の健全化に有効な管理方策と空間スケールの把握のための基礎情報をまとめる。
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Research Products
(2 results)