2011 Fiscal Year Annual Research Report
強制収容所の教育―移民国家カナダにおける国民意識形成と民族意識の相克
Project/Area Number |
22510256
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
溝上 智惠子 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (40283030)
|
Keywords | 学校教育 / カナダ / 移民史 / カトリック教会 |
Research Abstract |
本研究は、第二次世界大戦中に自国民でありながら、自国政府であるカナダ連邦政府から強制収容措置を受けた日系カナダ人の学校教育の実態を、アメリカやオーストラリアにおける状況と比較しつつ、明らかにすることを目的としている。 カトリック教会による支援状況については、日系カナダ人が集団移動した最初の収容地であるブリティッシュ・コロンビア州グリーンウッドを事例にとりあげて、実態を調査している。かの地において学校教育を受けた日系カナダ人およびその学校教育を全面的に支援したカトリック教会のフランシスコのアトンメント会関係者に対して、平成23年度は、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーにおいて、インタビュー調査を行った。学校教育を受けた当時最年少の世代の方々もすでに高齢に達しており、また学校教育支援に直接関与した教会関係者の存命者も限られているため、インタビュー結果は極めて貴重な情報となる。加えて、フランシスコのアトンメント会本部(アメリカ合衆国ニューヨーク州)やケベック州に本部をおくカトリック教会の他教派を対象に、関連資料の保存状況を確認するとともに、アーカイブス等に所蔵されている一部資料の収集をおこなった。 なお、仏教関係者の学校教育支援状況を把握するため、アメリカ合衆国ハワイ州にある本派本願寺ハワイ別院を訪問調査するとともに、アメリカにおける日系人研究に関する膨大な資料を所蔵しているハワイ大学附属図書館において、基礎情報の収集を行った。 さらに、アメリカとオーストラリアの収容所における学校教育の実態については、関連文献の収集をおこなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教会関係者の協力のもと、市販されていない日系カナダ人の教育関連の資料も収集できており、おおむね順調に進展していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
収容所というきわめて特殊な環境だったため、当時の資料は、日系カナダ人の間にも、また学校教育を支援した宗教関係者の間にもほとんど残存していない。まずはカナダの状況を中心に研究をすすめているが、関係者は広く北米全域にわたって居住しているため、効率的なインタビュー調査の実施がむずかしい。一方で、関係者は高齢のため貴重な情報が急速に失われていっており、研究の進捗を急ぎたい。
|
Research Products
(1 results)