2012 Fiscal Year Annual Research Report
強制収容所の教育―移民国家カナダにおける国民意識形成と民族意識の相克
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22510256
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
溝上 智惠子 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (40283030)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 学校教育 / カナダ / 移民史 |
Research Abstract |
本研究は、第二次世界大戦中に自国民でありながら、自国政府であるカナダ連邦政府から強制収容措置を受けた日系カナダ人の学校教育の実態を、アメリカやオーストラリアにおける状況と比較しつつ、明らかにすることを目的としている。 初等教育については、カナダ連邦政府がブリティッシュ・コロンビア州の教育カリキュラムにしたがって、財政的支援を行ったが、高校教育や就学前教育については、一切の支援を行わなかったことや、これら連邦政府が支援しなかったものの、収容先で日系カナダ人からの要望が強かった教育を支援したのが、キリスト教会関係者であったことなどが、すでに明らかにされている。 ついては、本研究では、キリスト教会関係者のうち、カトリック教会による支援状況について、日系カナダ人が集団移動した最初の収容地であるブリティッシュ・コロンビア州グリーンウッドを事例にとりあげて、その実態を調査している。グリーンウッドにおいて学校教育を受けた日系カナダ人およびその学校教育を全面的に支援したカトリック教会は、アメリカ合衆国ニューヨーク州グレイモアに本部をおくフランシスコのアトンメント会の女子修道会である。平成24年度はこの女子修道会の関係者に対して、インタビュー調査を行うとともに、同フランシスコのアトンメント会の男子修道会文書館と女子修道会文書館に保存されている、当時の活動記録の収集を行うとともに、詳細な分析を行った。 さらに、アメリカとオーストラリアの収容所における学校教育の実態については、関連文献の収集をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、アメリカ合衆国ニューヨーク州グレイモアに本部をおくフランシスコのアトンメント会の女子修道会と男子修道会にて、関連資料の収集と分析を行ったが、きわめて交通不便な地に立地しているため、その訪問にかかる経費のみで全研究費を使用してしまったことや、膨大な資料を収集してきたため、その分析に時間がかかり、アメリカやオーストラリアとの比較研究に遅れがでてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
カナダ・ケベック州に本部をおくカトリック教会の他教派を対象に、関連資料の保存状況を確認することができたので、平成25年度は、それら文書館等に所蔵されている資料の収集を積極的に行うとともに、生存する関係者が高齢のため貴重な情報が急速に失われているので、研究の進捗を急ぎたい。
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