2011 Fiscal Year Annual Research Report
現代パレスチナ文化の動態研究―生成と継承の現場から
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22510257
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
山本 薫 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (10431967)
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Keywords | 西アジア・中央アジア / パレスチナ / イスラエル / アラブ / 文化研究 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代パレスチナ文化の担い手たちの思想・実践・アイデンティティおよび彼らを取り巻く政治・経済・社会環境を、作品の分析に加えて、当事者たちへの聞き取り調査や活動の現場の実地調査を通じて明らかにすることにある。 23年度は22年度に引き続き文献・AV資料・インターネット・人的ネットワーク等を用いて現代パレスチナ文化に関する情報を収集し、作業用ホームページへの蓄積を進めた。また、申請者が近年最も注目しているパレスチナのラップ音楽の歌詞を書き起こして翻訳する作業にも着手し、ホームページへの掲載を進めている。これはレバノン・イスラエル領内・ガザ地区・欧米などで活動するパレスチナ系ラップミュージシャンたちの比較調査に向けた基礎作業となる。 海外調査についてはまず山本が8月から9月にかけてレバノン調査を行った。経由地をパリとして当地でも調査を行う予定であったが、レバノン情勢が隣国シリアの影響で流動化したことを踏まえ、今回はレバノンで開かれた国際研究会に出席した前後の期間に現地で調査をするにとどめた。成果としてはレバノン在住の研究者達との情報交換や資料収集に加え、パレスチナ難民2世のドキュメンタリー監督、バーディ・ザッカーク氏にインタビューを行い、本人のライフヒストリーや創作活動、さらにはレバノンにおけるパレスチナ人の文化活動全般について、貴重な情報を得ることが出来た。一方、研究協力者の田浪氏は昨年パレスチナ・イスラエル調査で大きな収穫を得たことから、2月に再び当地での調査を行い、文化センターやNGOの掘り起こしと聞き取り調査、現地でしか手に入らない貴重な資料の収集に努めた。 研究成果の発表については、アラブ世界に広がった「革命」の動きを文化やメディアの観点から分析する論考の執筆や口頭発表が中心となったが、そうした動きがパレスチナ情勢に及ぼす影響や、同時代的な文化現象(特にラップ音楽)についての知見を深めることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年にアラブ世界で発生した一連の「革命」の動きの影響で一部対象地域の政情が流動化したこと、また革命によって生じた周辺アラブ地域の文化状況の変化を観察・分析する新たな必要性に迫られたことによって、本研究計画の遂行に若干の影響が生じてはいるものの、資料収集や聞き取り調査等、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に従って研究を進めていくが、海外調査については着実な成果を上げつつあるパレスチナ・イスラエル調査への比重を当初計画よりも高めるよう若干の修正を行いたい。
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