2012 Fiscal Year Annual Research Report
現代パレスチナ文化の動態研究―生成と継承の現場から
Project/Area Number |
22510257
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
山本 薫 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (10431967)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | パレスチナ / イスラエル / アラブ / 文化研究 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代パレスチナ文化の担い手たちの思想・実践・アイデンティティおよび彼らを取り巻く政治・経済・社会環境を、作品の分析に加えて、当事者たちへの聞き取り調査や活動の現場の実地調査を通じて明らかにすることにある。 24年度は、これまでの調査で最も情報の蓄積が進んでいるパレスチナ/イスラエルの文化センターやNGOについて、情報のリスト化の作業に着手した。また2~3月に研究代表者の山本と協力者の田浪とで現地調査を行い、各地のNGOやアーティストへの聞き取り調査を集中的に行うと共に、現地の貴重な資料の収集も行った。 主な成果としては、東エルサレムに拠点を置くエドワード・サイード音楽院やラーマッラーのモダンアート・アカデミー、ジェニーンのフリーダムシアター等で、音楽・芸術・演劇といったパレスチナ文化をとりまく状況、政治情勢との関連などについて担当者に貴重なお話を伺えたほか、パレスチナを代表する画家スレイマン・マンスール氏、イスラエル領内リッダを拠点とするラップグループDAMなど、アーティスト達への貴重なインタビューも取ることができた。さらに、パレスチナで最も活発に文化・教育分野への助成を行っているカッターン財団のラーマッラー本部の担当者に財団の理念や活動について話を聞くことができた。カッターン財団の創設者は海外で事業に成功した在外パレスチナ人の富豪であり、そうした在外パレスチナ人と現地とのコネクションは今後のパレスチナ社会の発展やナショナル・アイデンティティの変容を考える上で極めて重要であるため、今後も引き続き調査を進めたいと考えている。 研究成果の発表としては、山本はアラブ世界全域で若者が現状への不満や抵抗を表現する重要なツールとなっているラップ音楽、田浪はダンスにおける伝統と革新というテーマを中心に、それぞれ講演や論考の発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度に山本はレバノンでの調査を行う予定であったが、シリア情勢を受けてレバノンの治安も不安定化したため、断念せざるをえなかった。しかしパレスチナ/イスラエルへの調査時に、現地のいくつかのNGOがレバノンのパレスチナ難民キャンプでのアウトリーチ・プログラムに取り組み始めているとの重要な情報を得ることができたことは大きな収穫であった。パレスチナ/イスラエル地域での調査は大変順調に進んでおり、今年度以降は文化センターやNGOの情報をリスト化する作業と、インタビューの書き起こし・翻訳作業を加速させ、最終報告書の作成につなげることができるめどがたっている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に従って今後も研究を続けていくが、調査対象地としては着実な成果を上げつつあるパレスチナ・イスラエルを中心に成果をまとめていくこととしたい。また、レバノンについても引き続き調査を継続する意向ではあるが、シリア情勢の行方次第によっては変更を余儀なくされる可能性は残る。まだ手つかずの欧米についても残りの期間に調査を敢行したい。作業用HPに成果を蓄積する作業を24年度には十分行うことができなかったため、今年度はデータ整理の作業を加速し、最終報告書の作成につなげたい。
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