2011 Fiscal Year Annual Research Report
ミャンマー政府の国民概念再検討:バマー・ムスリム概念形成分析を中心に
Project/Area Number |
22510259
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
斎藤 紋子 東京外国語大学, 外国語学部, 研究員 (20512411)
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Keywords | 地域研究 / 国民統合 / マイノリティ / ムスリム |
Research Abstract |
本研究は、ミャンマーにおける国民統合の過程とそこに含まれる問題を再検討することを目的とする。その手法としては、ビルマ族仏教徒中心の国民国家建設の中で、結果的に「国民」の最も周縁に置かれてしまったムスリム住民の実体験や彼らの持つ資料を詳細に検討する。移民の祖先であり、民族的にも宗教的にもマイノリティである彼らが自らをどのように国民国家に位置づけようとしてきたのかに注目し、ミャンマーの国民概念、国民統合を再検討していく。平成23年度に実施した研究は下記の通りである。 1.これまでに収集してきた資料を再度整理し、博士論文で扱った1930年代のバマー・ムスリムという最初の主張を再検討し、「ミャンマーにおける「バマー・ムスリム」概念の形成-1930年代ナショナリズム高揚期を中心として-」という論文にまとめ、東南アジア-歴史と文化-誌に投稿した。査読の後、掲載が決定し、平成24年5月末刊行予定である。 2.1920年代~30年代にナショナリストの想定していた「ビルマ人」概念を検討するための、愛知大学所蔵のトゥリヤ紙の閲覧については、23年度は行なえなかった。しかし、東京外国語大学およびアジア経済研究所所蔵の資料を閲覧し、引き続き研究を継続中である。 3.ミャンマーでの現地調査は平成24年2月19日~28日および3月11日~20日に実施した。平成23年3月30日より軍政から民政に移管したため、この1年での政治的・経済的変化は大きく、平成24年に実施したヤンゴンとマンダレーでの2回の調査は非常に興味深いものとなっている。軍政時代にマイノリティとして非常に困難な体験をしたバマー・ムスリムから、変化の側面と引き続き困難を経験している点の両方を聞くことができた。また、マンダレーでの調査ではヤンゴンとの相違について徐々に明らかになり、平成24年度にも引き続きマンダレーでの調査を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内調査(愛知大学)の遅れのため、および個人的事情により海外での長期滞在が難しくなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
何度かに分けて現地に行くことで、調査の継続を現地の人々から認められ、聞き取り調査が容易になることも明らかになったので、本年度もミャンマーでの現地調査は実施する予定である。最終年度のため、こちらも2回程度に分けて、愛知大学でのトゥリヤ紙の閲覧も行なう予定にしている。
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