2011 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴル高原における土地制度と移動牧畜の実践をめぐる実証的研究
Project/Area Number |
22510270
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
尾崎 孝宏 鹿児島大学, 法文学部, 准教授 (00315392)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 明 東京外国語大学, 外国語学部, 研究員 (90376830)
中村 知子 東北大学, 東北アジア研究センター, 専門研究員 (80513887)
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Keywords | モンゴル高原 / 移動牧畜 / 土地制度 / 災害 / 鉱山 |
Research Abstract |
本研究の目的は、モンゴル高原における土地制度と移動牧畜の実践の関係性を、主として文化人類学的な手法を通じて解明することであり、具体的には、1)土地制度の実効性、2)住民と土地制度、3)土地利用の実態について比較研究を行い、土地をめぐる制度の規定力と現実との関係性を個別地域について明らかにするとともに、地域偏差の実態を明らかにすることを目指している。 本年度は、当初予定では夏季にモンゴル国と内モンゴルにおいて本格的な現地調査を実施する予定であった。しかし、折からの震災の影響で、研究費交付が一部遅れたため、当初の予定を変更して現地調査はモンゴル国のみに絞り、調査地や調査期間も変更を行った。内モンゴル分については、日本国内の元牧民を主たる調査対象に変更し、そのインフォーマントより紹介された牧民にSkypeを利用して遠隔聞き取り調査を実施することで、現地調査に替えた。なお、今回の遠隔聞き取り調査については、少なくとも調査者が現地調査経験をし、現地の状況を理解している地域に限れば、予想以上に有効な方法であることが明らかとなった。 各研究者の具体的な調査は以下のとおりである。上村は、モンゴル国国会に提出されている牧地法案の眼目の一つである「牧地利用者グループ」が国際開発機関の援助により既に組織され、活動しているモンゴル国トゥブ県の調査地において聞き取り調査を行った。中村は、モンゴル国ドンドゴビ県マンダルゴビ市周辺において、社会主義時代~現在までの牧地利用および災害時の対応の経験に関する聞き取り調査を行った。尾崎は、過去の調査データの整理を行うとともに、中村の調査に同行し鉱業と牧畜を兼業的に行う牧民から現状に関する聞き取り調査を行い、また上述の日本国内およびSkypeを利用した聞き取り調査を通じて、内モンゴル牧民と地方政府との間の、土地制度の解釈の違いから生ずる紛争のメカニズムを分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本的には、データ収集及び分析は順調に進んでいる。なお、震災の影響で本年度の研究費交付が一部遅れた影響で、夏季に予定していた現地調査の規模を縮小せざるを得ない事態となったが、代わりに日本在住のモンゴル人からの聞き取り調査およびSkypeを利用した遠隔聞き取り調査を実施し、現地調査の穴埋めとした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であるため、基本的にはデータの最終的な分析と取りまとめを行う。各メンバーが既存の研究成果を持ち寄り、最終的な取りまとめを検討するとともに、成果発表の場として、内モンゴル大学において国際シンポジウムを開催予定である。なお、震災の影響で現地調査の実施に影響が出た分に関しては、来年度の夏季に追加調査を実施したい。
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