2011 Fiscal Year Annual Research Report
南北アメリカ移民地短詩型文学の発掘保存と社会史的活用に関する基礎研究
Project/Area Number |
22510276
|
Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
粂井 輝子 白百合女子大学, 文学部, 教授 (60205177)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳田 利夫 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (40119029)
|
Keywords | 移民史 / 社会史 / 地域間比較研究 / 移民地文芸 / 短詩型文学 |
Research Abstract |
南北アメリカ移民地短詩型文学の発掘と保存のために、粂井はJICA横浜海外移住資料館所蔵の『新世界』新聞および『日米』新聞の文芸欄を閲覧し、文芸欄をUSBに落とす作業を継続した。また、収集した資料から移民地の生活を反映している短歌、俳句、川柳を選び、入力する作業を継続した。さらに、長期休暇を利用して、シアトル市、シアトル市において、歌会や句会に出席し、参与観察を行いつつ、資料収集を行った。2012年2月では、アメリカ俳句協会、3月には加川文一詩碑保存会において、講演を行い、現地の文芸人と交流し、かつ資料の提供を受けた。また、3月では日系アメリカ人サンディエゴ歴史協会に赴き、収容所および抑留所で発行された川柳の機関誌を接写した。 柳田は、国立国会図書館所蔵マイクロフィルム版の『ペルー新報』から、文芸欄にかかわる記事を全て抜き出しリスト化するとともに、短歌、俳句、川柳、琉歌については、テキストとして全文をデジタル化する作業を継続した。さらに、長期休暇を利用して、ペルー共和国リマ市において、かつてペルー日本婦人会(現ペルー日系婦人会)文芸部が主催していた椰子の実短歌会の関係者からの聴き取り調査を実施するとともに、関係資料の収集を行った。同時に、同婦人会の議事録、会計簿を調査し、写真撮影を行い、デジタル資料として収集した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカ合衆国における移民地短詩型文学の収集は、当初の想定よりも、資料の発見ができた。とくに、従来の日本人移民史等に記載のない文芸作品も発見できたことは大きな収穫である。また、現地の文芸人との交流も進み、資料に関する情報提供を継続的に得られるようになった。ペルー共和国における移民地短詩型文学関係資料の収集は、現地社会における文芸活動の低調さもあって多くの資料を収集し得たとは言えないが、短歌会を主催最多婦人会の活動とうについても目を向け、ペルーにおける文芸活動の特徴を把握する糸口を見いだすことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
強制収容所で作成された川柳の句集が、敬老ホームのゴミ箱に捨てられていたという。知人がたまたま本研究について知っており、句集を保存してくれた。最近は、全米日系博物館もUCLAも移民資料の受け入れを、予算の関係から断っていると聞く。本研究は短詩型のみに焦点を合わせたが、他の文芸作品にも研究の射程を広げる必要があるのではないかと、痛感している。ペルー日系社会では文芸活動そのものが北米地域におけるよりも低調であるが、邦字新聞等を丹念に博捜してゆくことで、創作活動よりもむしろ文芸作品の消費、という観点からの研究の可能性が開かれているように感じた。
|
Research Products
(3 results)