2012 Fiscal Year Annual Research Report
視覚資料の活用による、初期グローバル化時代中国の思想文化史のジェンダー化研究
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22510285
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
坂元 ひろ子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (30205778)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ジェンダー / 近代中国 / 思想文化史 / 漫画 / 民族 / 図像 / 植民地文化 / 異文化連鎖 |
Research Abstract |
2012年度は研究代表者が理事をしている日本現代中国学会の大会開催が本務校でおこなわれたため、最初、予定していた国際シンポジウムまたはワークショップの開催は困難となったので、まず6月に台湾の中央研究院近代史研究所主催の第4回国際漢学会議への招聘に応じて、「漫画におけるモダンガールと抗日戦争」の発表をおこない、同研究院の中国近代女性史研究者をはじめ各国からの研究者からレビューを受けた。同時に、手がけてきた中国の1930年代ほとんど唯一の女性漫画家、梁白波は台湾で後半生を送ったことだけがわかっていたが、詳細については不明だったため、中央研究院の研究者の協力を得て、伝記捜索を継続し、1950年代、新聞の長編小説の挿絵を書いていたことを突き止め、同研究院で複写もとることができた。これで梁白波研究の空白を埋めることができた。 さらに、同じく6月、オランダ、ライデンのIIAS(国際アジア学研究所)での国際セミナー「歴史、アイデンティティ、集団記憶―近代中国」への招聘に応じ、清末から現在への継続をみることのできる中国の民族とジェンダー観に関する発表をおこない、欧米各国からの参加者からレビューを受けた。 8月には北京の中国社会科学院近代史研究所で講演を依頼され、中国近現代思想文化史におけるジェンダー化のための図像史料使用について講演、所員からレビューを受けた。 11月にはガヤトリ・スピヴァク教授(コロンビア大学)京都賞受賞記念ワークショップに招かれ、アジアにおけるジェンダー問題について意見交流をおこなうことができた。 本務校においては『満洲グラフ』の閲覧、データ入力作業をおこないつつ、1950年代中国のジェンダー問題に関する研究会を東洋文庫の史料班に参加しておこなってきているため、1950年代のポスター(新年画)の捜索、入力も並行しておこなってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際シンポジウムへの招聘が毎年、何件かはあり、そこでの報告が本研究の構想を深めていくのに役立ち、また東洋文庫の現代中国研究資料室ジェンダー資料研究班参加で関連研究者との交流が密となり、研究の幅を拡げることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は研究代表者が理事長をしている中国社会文化学会の大会シンポジウム(7月)のテーマを「中国のジェンダー構造の歴史的変容」と決定したので、すでに国内報告者を集めて前近代の部の予備研究会を開いて議論をつめ、6月にはそれをふまえて近代の部の予備研究会を開く。招聘海外スピーカー夏暁虹北京大学教授の予備研究会参加は無理だが、紙面参加をしてもらい、また通訳も含めて参加のうえ、本研究の構想とかみあわせながら、大会時・大会後における討論・交流を深めるbeku 準備を進める。 大会終了後は、『中国近現代思想文化史』を完成するとともに、本研究の最終的な総括にかかる。8月にバンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学における「東アジア社会の文脈における女性の位置」国際シンポジウム、10月に北京大学における「厳復:中国と世界」国際シンポジウムにおいて成果報告をし、レビューを受け、近現代中国の歴史・哲学・文学・女性学の研究者らと研究交流をして知見を深める。 また、東洋文庫の現代中国研究資料室ジェンダー資料研究班に参加して1950年代のジェンダー関係の文献を読むなかで、宣伝ポスターの分析をあわせて開始しているので、これによってこれまで手がけた清末・民国期からさらに中華人民共和国についても一定の基礎研究を積むことで、中国を中心とする近現代アジア思想文化史のジェンダー化に貢献するべく、さらなる活字化を進める。 なお本務校にあっては、昨年度までに終了しなかった『満洲グラフ』(1933-1944)、さらに加えて1950年代以降の中国(プロパガンダ)ポスター等のデータ入力、分析を継続する。
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Research Products
(7 results)