2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22510289
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
沢山 美果子 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 客員研究員 (10154155)
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Keywords | 身体 / いのち / 近世 / 乳 / 子ども |
Research Abstract |
1、本研究の目的は、女の身体と子どもの「いのち」の結節点にあるとともに、近世社会にあっては「いのち」を繋いでいく上で不可欠の命綱であった「乳」に焦点をあて、「乳」を巡る人々のネットワークをはじめとする、近世社会における女の身体と子どものいのちの環境を具体的に明らかにすることで、『いのちのジェンダー史』を切り拓くことにある。 2、研究の二年目にあたる今年度は、初年度に収集した史料の分析をもとに、とくに捨て子の養育をめぐる都市と農村の関係を乳に焦点をあてて分析し、「都市と農村の関係からみた近世大坂の捨て子たち」『文化共生学研究』11号、岡山大学大学院社会文化科学研究科(2012年3月)としてまとめた。 3、また、人々が「いのち」を繋いできたことの歴史的意味を、身体という人間の内なる自然と人々はどう向き合ってきたのかという視点から考える「近世人のライフコース」(『講座 環境の日本史』吉川弘分館、2012年刊行予定)を執筆し、本研究の持つ意味を、近世史全体の中で考える作業をおこなった。 4、さらに、本研究が、地域に生きる人々にとって、どのような意味を持つのかを検証する意味でもフィールドの一つである岩手県の地域おこし歴史懇話会の招待講演として、一関市、藤澤町の二つの市町村で講演を行い、地域の人々のご意見やご批判をいただく機会を持つとともに、講演内容を『平成22年度講演記録集』(地域おこし歴史懇話会編)に執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)3年間の研究期間の2年間が経過したが、当初の計画通り、京都、大阪の文書などの史料収集を終えたのみならず、新たに山口藩の文書も収集し、京都、大坂の史料の分析結果は、『文化共生学研究』などにまとめた。(2)また近世の乳をめぐるネットワークと女の身体と子どものいのちをめぐる関係について、民衆史研究会の創立50周年記念シンポジウムで報告するとともに論文にまとめた。(3)以上のように、史料収集とその分析結果を報告し論文にまとめる作業を積み重ねることで、最終年度に、研究成果報告書を刊行するための準備が整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)上記のとおり、研究成果を取りまとめた研究成果報告書の刊行に向けての準備が整いつつある。(2)また当初の計画にはなかったが、今年度新たに発掘した松江藩の乳母奉公をめぐる文書をもとに考察をすすめ、城下と農村、武士と農民の関係性も視野に入れた近世の乳をめぐるネットワークの様相を重層的に探る。(3)それら地方の文書を、さらに近世育児書、女訓書のなかでの授乳や乳母に関する記述の分析とつきあわせることで、本研究課題への、さらなる接近をめざす。
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