2011 Fiscal Year Annual Research Report
新生殖技術の倫理的妥当性に関する基礎的研究ー生殖意識のジェンダー差異調査を中心に
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22510292
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
浅井 美智子 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (10212466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森岡 正博 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (80192780)
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Keywords | 生命倫理 / 生殖補助技術 / 家族 / 親子 |
Research Abstract |
平成23年2月に行った「男性不妊調査(回答数600)」の集計を終了し、分析を行ってきたが、一部調査結果に納得のできないところが生じたため追跡調査を行うべく繰越申請を行った。その間、調査結果の分析において統計学および本調査研究に適格な協力者(梅田直美)を得ることができたため、再分析を行い極めて有意義な分析結果を得たので再調査は行わずに既存の調査結果の再分析に集中した。 23年度に明らかになったことは、以前に行った不妊治療に対する女性の意識と比較した結果、男性は、女性に比べて「不妊」すなわち「子どものいない人生」を受け入れる傾向があることがわかった。また、パートナーをもたない男性は、もっている男性に比べて「生殖補助医療:ART」を否定的に捉える傾向が見られた。しかし、総合的みれば、人工授精や体外受精・顕微授精に対する自然観については、「自然でない」とする否定的意識は女性に比べて低いという結果を得られた。つまり、不妊治療としてどのようなARTを受け入れるかはパートナーである女性が主導権をもっており、男性はパートナーの女性の選択に協力しているという姿勢が見られた。とはいえ、記述回答からは、不妊治療に積極的な男性の意識も読み取ることができた。さらに、第三者が介入するARTに対する自然観に影響を与えている因子は「夫婦」であった。つまり、子どもは「夫婦」の遺伝的つながりを必須要件としているといえる。これは、女性の意識調査と同様であり、夫婦の遺伝的子どもを得ることが第一であり、第三者の卵や子宮を借りることが第二の問題であることがわかった。 また、同性パートナーのいる男性は3名いたが、遺伝的子どもをもつという選択肢全員もっていなかった。同性パートナーのいる人々が自分の遺伝的子どもをもつことを可能とする生殖補助医療を受けていくことのあるアメリカの事情とは異なる結果であり、今後の検討課題とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査結果の精密な分析を行うことにより、当初目的をおおむね達成することができた。予測しない新たな研究成果としては、新生殖技術に対する男性の意識は、女性に比べてより客観的な傾向を示していることがわかった。つまり、当事者性が低いということである。ただ、第三者がかかわる生殖に対しては、女性と同様、消極的傾向を示した。男性の不妊治療に対する意識に影響を与えている要因をより精密に分析する方向で研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
600名の男性に行ったARTの自然観に対する調査の結果については、ほぼ分析を終了することができた。唯一残っているのは、自由記述の分析である。平成24年度は、本研究で得られた、ARTに対する男性の自由記述と過去に行った同様の調査で得られた女性の自由記述を丹念に比較考察する予定である。
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Research Products
(4 results)