2011 Fiscal Year Annual Research Report
解剖生理学の進展とヘレニズム期の人間観の展開をめぐる思想文化史的研究
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22520002
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
今井 正浩 弘前大学, 人文学部, 教授 (80281913)
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Keywords | 人体の中枢器官 / アリストテレス / ヒポクラテス医学派 / 脳中心主義 / 心臓中心説 / 『神聖病論』 / 自然学小論集 / 動物学著作 |
Research Abstract |
本研究の目的は,前5世紀に経験科学としての基礎を確立したギリシア医学が,前3世紀以降に,解剖生理学の進展にともなって人体の科学へと展開していくプロセスをとおして,ヘレニズム期の人間観の展開にどのような影響をおよぼしたかという問題について,古典ギリシア語・ラテン語の文献資料にもとづいて,思想文化史的観点に立って,実証的に解明していくことにあった. 本研究の第二年目にあたる平成23年度においては,第一年目の研究成果をふまえつつ,研究の視座をギリシア古典期からヘレニズム・ローマ期にかけて,数多くの医学者たちや哲学者たちの間でくりひろげられてきた人体の中枢器官をめぐる論争史に広げ,とくに心臓中心説の旗頭(はたがしら)として,ストア派等に大きな影響を与えたとされるアリストテレス(384-322BC)の生理学理論に焦点をあてた.そして,この哲学者の心臓中心説を支持する議論が,ヒポクラテス医学派における脳中心説の伝統を主要な批判のターゲットの一つにしているという事実を,厳密な文献学的考察をとおして明らかにしようと試みた. 本年度の後半には,この方面の研究の慢性的資料不足を補う目的で,ケンブリッジ大学古典学部におもむき,関係する資料の収集・調査等に精力的に努めるとともに,この方面の専門研究者たちと積極的な意見交換を行った結果,きわめて多くの有益なアドバイスや提案を得ることができた. 以上の研究の諸成果については,最終的に英文の学術論文articleとしてとりまとめ,科学史系の専門の学術雑誌Historia Scientiarum:International Journal of the History of Science Society of Japanに投稿した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は,当該研究課題にもとづく研究の第2年目の研究年度にあたるが,研究作業は3年にわたる研究期間全体を視野に入れながら,継続的・段階的に進展しており,所期の目的にそって,ほぼ順調にすすんでいると判断される.本年度の研究成果についても,すでに査読付きの学術雑誌に投稿され,受理されている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,当該研究課題にもとづく研究の最終年度にあたるため,研究成果の最終的なとりまとめ作業を視野に入れながら,最終段階の研究作業に着手する.ヘロピロスとともに,ヘレニズム期の医学の進展に大きな役割をはたしたとされるエラシストラトス(c.320-240BC)の解剖生理学を射程に入れながら,その思想的背景を明らかにするとともに,この医学者と同時代の哲学者たちとの影響関係等についても検証を試みる予定である.
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