2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520007
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
渡辺 邦夫 茨城大学, 人文学部, 教授 (30191753)
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Keywords | 幸福 / 知識 / 主知主義 / 『テアイテトル』 / 『ニコマコス倫理学』 / 実践能力 / 徳倫理学 / 反相対主義 |
Research Abstract |
プラトン『テアイテトス』がアリストテレス『ニコマコス倫理学』の実践性と道徳性の強い知識把握に影響を与えたという仮説を実証する、四年間の研究である。 第一に加藤尚武氏と関根清三氏主宰の共同研究に「ヌスバウム「相対的ではない徳-アリストテレス的アプローチ」の要点と批評」を寄稿した。一般財団法人ホモコントリビューエンス研究所「貢献する気持ち」共同研究ホームページで内部閲覧が可能になっているが、さらに『アリストテレス哲学における人間理解の研究』と題する私のアリストテレス解釈研究書が平成23年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)に採択され23年度中に刊行の見通しであり、共同研究の許可のもと、その第一章後半部として同論文の主要部分を加える。アリストテレス倫理の現代的意義を、ヌスバウムの反相対主義とドナルド・デイヴィドソンの概念枠批判の論点を使用しながら、とくに個別の場面で実践性と道徳性が問われる知識と知性の重視の問題として論じた。なお同書序文でも、プラトン『メノン』とアリストテレス『ニコマコス倫理学』の関連を検討している。 第二に、『法制史研究』60号に「吉沢一也「渡辺邦夫「アテナイの法廷とソクラテス」書評への反論」を書き、不当判決に対する、知性化した怒りの感情にあらわれたソクラテス的な高い道徳性が、量刑を裁判の場でおこなうアテナイ法手続きの不備に対しても、最も効果的な人間的反応であったと論じた。議論の過程で、間接的にギリシア倫理における知識の性格をも解明でき、プラトン『クリトン』および『ソクラテスの弁明』を『ニコマコス倫理学』的な感情理解にも沿う方向で解釈できたと考える。 本年度目標とした『テアイテトス』「神の似像」の有益性概念については、マーク・マックフェラン氏他の内外研究者との討論の上で、解釈を作っているところである。同様に目標とした「知識の問題の始まりについて」の英語論文及び『ニコマコス倫理学』第10巻7,8章解釈作成も、現在、途上である。
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Research Products
(2 results)