2011 Fiscal Year Annual Research Report
バリアフリー教育の社会倫理学的究明(障碍と平等の再定義を軸として)
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22520014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川本 隆史 東京大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (40137758)
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Keywords | バリアフリー / 教育 / 社会倫理 / 障碍 / 平等 / 依存 / ケア / 分配 |
Research Abstract |
本研究は各種の教育現場における「バリアフリー教育」の進展をにらみながら、そうした教育を支える社会や制度の望ましいあり方を社会倫理学の観点から構想しようとするものである。その際に機軸とするのは、《障碍》および《平等》という理念を再定義する(時代と社会のニーズに応じて「編み直す」unthinking)試みであって、この作業を通じて、研究代表者が考究してきた社会倫理学・社会正義の理論と現在の所属部局に設置された「バリアフリー教育開発研究センター」の実践とを相互に突き合わせ、ことばの真の意味での応用倫理学」に取り組みたいと考えている。 二年目にあたる平成23年度も、各地の現場に赴いてバリアフリー教育の実態調査に従事した。 バリアフリーの教育と倫理に関わる文献の収集と読解についても、順調に進展している。 特筆すべき成果としては、広島大学文学部における公開授業「広島で正義とケアを編み直す」(2011年6月26日)がNHK教育テレビの「白熱教室JAPAN」枠で二回(2011年7月24日、31日)にわたって放映されたことを挙げねばなるまい。広島大学は日本学生支援機構の障害学生支援ネットワーク拠点校であり、「アクセシビリティセンター」を開設している。制度上のバリアを廃し、市民や他大学の学生、高校生に広く開放された授業を同大キャンパスで行うことにより、同大のバリアフリー化をつぶさに観察することができた。 また本務校で今年度よりスタートした、学部横断型教育プログラムギバリア・スタディーズ」(前期2単位)の二回を分担できたのも得がたい経験であった(演題は「社会倫理学と障碍研究-ロールズンセンの論争を手がかりに」および「障碍・依存・ケア-エヴァ・フェダー・キテイの挑戦」。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の態勢づくりに専念せざるを得なかった初年度に比べて、広島大学での公開授業や本務校での「バリア・スタディーズ」などの教育実践に関与する機会が与えられたため、理論と実践の「反照的均衡」(ロールズ)を身をもって試みることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度が最終年度にあたるため、研究のまとめと何らかの形での成果の社会還元を主要目標としたい。そのための方策としては、申請の当初より立てていた(1)高等教育機関における「バリアフリー化」および障碍学生支援の実態調査、(2)バリアフリーの教育と倫理に関わる文献の収集と読解、(3)国内の研究協力者との連携という三本柱を堅持することになろう。 なお平成23年度よりスタートした科研費基盤研究(A)「社会に生きる学力形成をめざしたカリキュラム・イノベーションの理論的・実践的研究」(研究代表者:小玉重夫)に研究協力者(「社会参加の学習ユニット」)として加わっている。初等・中等教育との関連が強いこのプロジェクトへの参画を通じて、高等教育にウェイトを置いてきた本研究課題の拡充を図りたい。
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Research Products
(6 results)