2012 Fiscal Year Annual Research Report
近現代ロシアにおける存在論的な意識・知性理解と倫理的関心についての研究
Project/Area Number |
22520015
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
大須賀 史和 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (30302897)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | ロシア / 存在論 / 倫理 / 意識 / 知性 |
Research Abstract |
本研究計画では、近現代のロシア哲学・思想における存在論的な観点からの意識ないし知性の理解のあり方と、それに関連した倫理的関心のあり方を解明することを目的としている。 計画の最終年度にあたる本年度はこれまでの資料調査や研究者との討論、文献の分析などを通じて得られた知見に依拠して論文1本を執筆して学術雑誌に公開した。 また、これまでわが国で翻訳が行われていない基本文献の試訳を行い、一部を資料集として刊行した。その一つは研究協力者である木部敬によるG.G.シュペートの『言葉の内的形式』(1927年)である。大須賀はA.F.ローセフの『芸術的形象の弁証法』(1927)などの試訳を公開した。これらは共に「言語」や「表現」を考察のテーマとしているが、それらは単に個人の主観を外的に反映したものではなく、言語共同体としての民族や社会という場において具現化するものとして、個人の主観や思いなしの恣意性には回収しきれない一定の規範性を帯びる弁証法的な過程を伴うという捉え方に立っている。 さらに、ローセフの場合は、言葉がある意味を表示するという構図をそのまま「物」にも適用し、「物」そのものがそれに内在する「意味=本質」を表示する「物=名」として存在するという、イデア論的な「汎名論」とも呼ぶべき観点を提起している。具体的な存在が自らに内在する本質の記号としての意味を持つのは人間も同じである。その際、人間の意識は「人間」という本質が「物=名」という存在において自己を意識していることを意味する。そこでは、本質の表現されたあり方が認識されると共に、本質のあるべき姿への志向も生まれることができ、それらが多数集まることで多様な「人間」の本質が表現された社会も成立する。このような形で言語論、存在論、意識論、社会性、倫理が結合しうる理路の存在を明らかにしたことが本研究の重要な意義であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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