2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代哲学史のなかのカント理論哲学――対話的哲学史の試み
Project/Area Number |
22520016
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
城戸 淳 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90323948)
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Keywords | カント / デカルト / 観念論 / 『純粋理性批判』 / 理性 / コギト |
Research Abstract |
本研究は、『純粋理性批判』を中心とするカントの理論哲学を近代哲学史のなかに位置づけ、デカルト、ロック、ライプニッツ、ヒュームなどの近代の哲学者とカント哲学との対話の地平を設定することによって、カント哲学の輪郭を切り出そうとする哲学史的研究である。平成22年度の研究は、おもにデカルトをとりあげて、近代哲学の骨格となったデカルト的な観念(idea)のモデルに対して、カント哲学の特質を明らかにすることを試みた。コギトを実体的な中核とするデカルトに対して、カントはむしろ総合作用が自覚的な表象を可能にすると考える。このような分析の成果の一端は近刊の熊野純彦編『近代哲学の名著』(中公新書)における『純粋理性批判』の解説論文に掲載される。デカルト的な「想像」の理解をカントが刷新した経緯については、栗原隆編『共感と感応-人間学の新たな地平』(東北大学出版会)における「想像力と共通感覚-カント哲学のコンテクスト」としてちかく刊行される予定である。23年度は、さらにイギリスのロック哲学経由での観念モデルの受容を視野に入れて、哲学史的な研究を拡大していきたい。また、デカルト的な明晰判明の基礎にあったのは直観的な知性の思想であり、これに対立してカントのいう理性は個々の悟性認識を総括するという論弁的な性格をもつ。このようなカントの理性の思想の生成について、ヘーゲル学会でのシンポジウムで口頭発表したが、これが23年度にヘーゲル学会の学会誌に掲載される予定である。
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Research Products
(3 results)