2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520017
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
石井 潔 静岡大学, 本部, 理事 (80176130)
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Keywords | 批評 / 道徳教育 / ジレンマ |
Research Abstract |
まず、文献研究については、国内の代表的な道徳教育実践についての基本文献及び主に英語圏のジレンマを利用した授業実践例関連の資料、文芸「批評」さらには「批判=批評」概念を中心とした言説分析、社会分析を行っている批判的実在論関連の文献について、その収集、分析を行った。そこから得られた研究成果は多義に渡るが、例えば「白熱教室」で有名になったサンデルの正義論講義に見られるジレンマを中心とする授業展開が、近代的な文芸「批評」の基礎となっている市民的「主体」の視点の多様性と共通する点が多いことを解明できたことがあげられる。 次に実地調査では、本年度は特に国語教育及び言語教育のなかで「主体」の問題がどのような位置づけを与えられているかに焦点をあてた。前者については、「実生活に活かす力をはぐくむ授業の創造」を研究テーマとする琉球大学教育学部附属中学校の第23回教育研究発表会(2010.11.13)に参加し、主に国語科の研究授業及び教科研究会のなかで、具体的な授業案に即して登場人物や物語の語り手の「主体」としての視角の時間的空間的移動や多角的視点の生成等が、国語の授業展開のなかで決定的な役割を果たしていることを確認することができた。また後者については、早稲田大学を会場として開催された国際研究集会「言語教育とアイデンティティ形成」(20113.5)に参加し、母語と外国語に関する多様化する環境のなかで、言語の学習者の側の「主体」形成のもつ多元性が共通のテーマとして浮かび上がり(基調講演を行ったスイス人研究者アリーヌ・ゴアール=ラデンコヴィックは、このような「主体」形成を「人生物語(le recit de vie)」の語りという観点から分析した)、両者を通じて、「批評」的実践の前提となる「主体」の複数性の理論的重要性を見出すことができたことは大きな成果であった。
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Research Products
(1 results)