2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22520022
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
出口 康夫 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20314073)
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Keywords | 分析アジア哲学 / 華厳思想 / 無尽仏身論 / コスモロジー / アバター・フェローシップ / 真矛盾主義 / 西谷哲学 / 「行」の哲学 |
Research Abstract |
今年度の研究成果は以下の四点にまとめることができる。(一)非古典算術と可能世界形而上学の道具立てを用い、「十数の譬え」に即して構築した華厳思想解釈の枠組みを、法蔵の「無尽仏身論」とコスモロジーをカバーできるように展開し、異なった可能世界に属する存在者の間の新たな関係として「アバター・フェローシップ」という概念を提案した。この解釈の試みは、「Buddha Body as a Trope」という論考としてまとめられ、その様々なバージョンにもとついた発表を、2012年6月には台湾の国立中央研究院(アカデミア・シニカ)、8月にはメルボルン大学、3月にはマサチューセッツ州のスミスカレッジで、それぞれ行なった。(二)Jay Garfield, GrahamPriestとの共著論文であるThe Ways of Dialetheism(2008)をテーマとする国際ワークショップを11月に京都大学で開催し、海外から参加した6名の研究者と2日間にわたる集中討議を行なった。この討議の結果は、上記論文に対する数編の批判的論考と、それに対する応答論文として、比較思想の分野で国際的に高い評価を得ているPhilosophy East & West誌の特集号として公刊される予定である。(三)矛盾許容型論理を用いた、西谷啓治の後期哲学の解釈の新展開となる論考を「Later Nishitani on Emoionand Action」としてまとめ、3月にスミスカレッジで講演した。(四)その他にも、国内外の研究者を京都大学に招き、講演やセミナーを開催したり、研究打ち合わせを行なうことで、研究計画全般に関する意見交換を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
華厳思想の仏身論、コスモロジーに対する解釈の展開は、当初の予定通りに遂行されたが、その過程で、「アバター・フェローシップ」という新たな形而上学的概念の提案を行なえたことは、予期された以上の成果であった。また、その新概念を用いて、天台の「無情仏心論」に対する独自の解釈を与え得たこと、さらに上記共著論文に対する批判に答える作業において、道元の正法眼蔵、天台の「三諦円融論」に対する独自の解釈の足がかりを売ることも出来た。これらも計画された内容を上回るの研究成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成21年度に得られた知見を、英語論文、日本語論文として執筆、公刊する。また当初の計画に加え、高山岩男の「呼応の論理」と「所の倫理」を、「呼応の倫理」と「所の論理」として換骨奪胎的に展開することを目指す。
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Research Products
(14 results)