2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520044
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
早坂 俊廣 信州大学, 人文学部, 准教授 (10259963)
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Keywords | 中国哲学 / 浙東学術 / 全祖望 / 記録保存 |
Research Abstract |
本研究は、清朝中期以降の寧波、端的に言えば「ポスト全祖望の時代の寧波」において、文化伝統(特に地域に根ざしたそれ)はいかに保存・継承されていったのかを検証することを目的としている。本年度は、勤務校よりサバティカル研修を認められたため、中国杭州市の浙江大学に拠点を構え、現地ならではの研究を行うことができた。具体的には浙江省寧波市・杭州市等で実地調査を行い、全祖望および彼の友人に関わる歴史遺跡を実見したり、地理的な場所環境を確認したりした(廬氏抱経楼、徐氏煙嶼楼、趙氏小山堂、等といった文化地点・遺址)。また、浙江大学図書館・浙江図書館等で全祖望や王梓材・馮雲濠に関わる資料(『宋元学案』、『水経注』等)を調査・収集するとともに、多くの現地研究者たちと研究情報の交換を行うことができた。研究成果として、浙江大学において「全祖望与場所的記憶」、復旦大学において「全祖望与鈔書的精神史」、中国計量学院・杭州師範大学において「当代日本中国学研究的方法与動向」という題目で学術講演を行うとともに、『儒学天地』2012年第1期に「全祖望与鈔書的精神史」という論文(中国語。申緒〓訳)を発表した。中国語で講演を行うことで、国際的な学術交流を促進し、中国語の論文を発表することで、研究成果をより広い研究者が利用可能となった。申請時の研究実施計画では予定されていた、中国人研究者を招いた日本でのワークショップは、中国に研究拠点を構えたために実施困難となったが、中国での講演・論文発表でその代替を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度に行う予定であった〓県廬氏の抱経楼について今年度に調査を行うことができ、また、杭州市内にある全祖望の友人たちに関わる現地調査を行うことができた。併せて、『宋元学案』『水経注』に関する全祖望の研究についても文献調査を行い、中国語で論文発表や講演を行うなど、研究計画通りほぼ順調に計画が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
全祖望の資料・記録を保存継承していった人物たちの研究に、徐々に力点を移していく。当初の研究計画では王梓材・馮雲濠・徐時棟を同程度に扱う予定であったが、馮雲濠の属する慈渓馬氏に関する研究の重要性がより強く意識されてきたため、24年度は特にその研究に力点を置くことにする。
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