2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520046
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宇佐美 文理 京都大学, 文学研究科, 准教授 (70232808)
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Keywords | 黄庭堅 / 絵画理論 / 中国絵画 |
Research Abstract |
研究を開始するにあたり、まず最初に、黄庭堅の題跋に関する文献調査を行った。これは、国立公文書館における明版等の黄庭堅の文集を、四部叢刊本(南宋版)と校合したものである。代表者個人として、黄庭堅の題画詩を室町禅僧の解釈によりつつ読み進めると同時に、中国哲学研究者四名、中国美術研究者十三名(会によって出席者には変動あり)からなる、題跋の読書研究会を組織し、会読を進めた。その内容は、前半二時間は題跋についてあらかじめ作成された訳注を全員で検討し、後半の二時間は、当該題跋が対象とした絵画について、その作品そのものは現存するわけではないので、題跋に記述された諸々のモチーフ、さらには当該画家の画風などを勘案して、現存する伝承作品の中から、もっともそのイメージに近いものを(複数)選び、再度題跋の内容を検討しつつ、その題跋に託された黄庭堅の絵画に対する思想を考察した。詳細な訳注が作成されたことは言うまでもないが、考察の経過で、たとえば北宋太宗の秘蔵詮の挿絵の中に黄庭堅の題跋の記述にぴったり適合した図像が見つかるなど、図像的見地における成果も見逃せない。今後もこの形の考察を続けることにより、黄庭堅絵画理論の新しい側面が明らかになっていくと思われる。そして、この考察の成果を刊行(訳注と図版ならびに解説のセット)することにより、まずなによりも、これまで黄庭堅の題跋が読まれてきた読み方とは全く違う「イメージを伴った読み」になることは間違いがない。
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Research Products
(3 results)