2011 Fiscal Year Annual Research Report
敦煌文獻および四川石窟資料から見た道教・仏教の社会への受容と浸透
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22520048
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
遊佐 昇 明海大学, 外国語学部, 教授 (40210588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒見 泰史 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (30383186)
劉 勲寧 明海大学, 外国語学部, 教授 (90261750)
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Keywords | 敦煌 / 敦煌文獻 / 四川 / 石窟資料 / 道教 / 仏教 / 俗講 / 唱導 |
Research Abstract |
当該年度の9月に中国・甘粛省敦煌で現地実地調査を行った。敦煌莫高窟石窟では、隋唐五代窟の壁画を中心に調査研究中の写本との関連を検討した。刊行されている莫高窟の写真集からだけでは十分に感じ取ることのできない窟の位置と大きさ、壁画の位置関係等を実感できたのは収穫であり、研究資料となるメモを残した。また、敦煌の街と莫高窟との距離感、及びその途中の道の左右に墓が多く設営されていることが観察でき、窟と人々の関係を考えるヒントを得た。滞在中の一日を使って、甘粛省安西県の西南70キロメートル南山中の楡林窟への調査も行った。当日見ることのできた10程度の窟から、莫高窟との類似点も観察できたと同時に、壁画の一部分に中世時期の庶民生活、農村生活をほうふつさせる場面も発見でき、大きな収穫となった。ただ敦煌滞在の期間が限られていたことがあって、見ることのできなかった窟や、壁画、文物も多く、再度の調査訪問を期した。 前年より翻刻作業を続けていた北京国家図書館藏敦煌文書BD1219、BD7620を用いての道教の俗講と唱導に関する文献からの研究は、その一部を論文として発表した。この成果を通して、道教の俗講についての研究は具体的な状況を推測できるまでに進めることができたと確信しているが、そこから一つの着想を得て、敦煌文献中の道教関連文献の再評価に着手した。以前取り上げたことのある「葉浄能詩」(S,6836)は、新たに道教の俗講と唱導に繋がる側面から再度の見直しをする必要を感じ、検討の作業を始めた。ここには本研究のキーワードとなる四川との繋がりが重要な要素になっている。 研究分担者も、その分担部分である仏教方面での研究、石窟石碑等からの研究を地道に推し進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
敦煌文献を用いての研究では、当初の期待を超えた成果を上げていると考えているが、そこから新たな着想が生まれてきていて、再度の敦煌現地、及び四川省内の石窟、道観等の調査を行いたい状況にある。(2)とした理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の推進に当たっては、当初の考え通り四川石窟資料と敦煌文獻を主たる資料として進めてきている。「道教・仏教の社会への受容と浸透」に関しては、兩教ともに人々への橋渡しの手段として用いた俗講と唱導をその手掛かりとして研究を進めている。この研究は更に発展する方向性をはらんでおり、更に進めていきたい。また、この研究を遂行する中で分かってきたことは、場と人に対する視点の重要性である。この点についても、敦煌の場、四川省各地の石窟、寺観等への現地調査を重ねることで進めていきたい。
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Research Products
(3 results)