Research Abstract |
本研究は古代インドの宗教生活において,髪と髭(および体毛,爪)の持つ象徴的な意味とその取り扱い(切る・剃る,伸ばす,特定の形にする等)に関する原則を解明することを目的とする。 助成金交付が10月末に内定され,11月初めより研究計画の実施を開始した。まず,平成11(1999)年にMette教授(ドイツ)記念論文集に招待され準備した同名のドイツ語論文を再検討し,新たな視点から論点を整理して方向性を定め,今回の研究において追加する資料の範囲を予測した。次に主要な資料をヴェーダ文献から仏教ジャイナ教へと時代順にデータベース化することに着手し,スキャナーとコピー機を購入した。コンピューター入力に際しては学生の助力を得て助金を支払った。 本研究を遂行する行程が明らかになり,「髪と髭の象徴性」のアウトラインの見えてきた12月に,京都大学大学院文学研究科インド古典学において,本研究と同じ題名で集中講義を行った。ヴェーダから古典哲学,叙事詩,ジャイナ教,仏教,さらにインド学以外の美術史,歴史等の幅広い専門分野から多数の受講者があり,活発な質疑応答を通じて,今後の研究の進展に有益な多くの事柄に気づくことができた。また,この機会に京都大学を中心に資料を集め,コピーのために謝金を支払った。 1月以降は資料の収集と検討をさらに進め,ヴェーダ文献の主要部分の分析が終了に近づいた。しかし3月11日に東日本大震災が起こり,さらに余震が繰り返され,研究機関および自宅の書架・図書が倒壊・散乱し,長期間,使用不可能となった。研究環境を再整備するために多大の時間と労力を要し,研究の中断を余儀なくされた。また交通機関の途絶のため3月に予定していた東京への出張(資料収集と意見交換)を6月に延期した。
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