2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520052
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
後藤 純子 (阪本 純子) 宮城学院女子大学, 附置研究所, 研究員 (60275237)
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Keywords | 印度哲学 / 仏教学 / 宗教学 / 美術史 / 民俗学 |
Research Abstract |
古代において髪と鬚の取扱は,個人の自由な自己表現というよりも,個人の属する社会的状況(生まれ,性差,職業,身分等)を反映する度合いが現在よりも大きく,また祭式,苦行などの宗教的行為との関連が深い。とりわけ宵代インドでは生まれによる社会階級が堅固であり,宗教儀礼の執行に必要な知識もバラモン階級出身の祭官学者に独占されていた。後期ブラーフマナ文献には,都市国家の隆盛にともない大きな社会変動が起き,宗教活動とそのための「知(ヴェーダ)」がバラモン階級から王族階級へと解放されてゆく様子が描かれている。その代表例として,バラモン学者Y(11)avalkyaと王Janakaが祭式Agnihotraに関して議論する対話を取り上げ,第5回国際ヴェーダ学会(ルーマニア,ブカレスト大学・ルーマニア学士院共催)で招待講演した。またこの学会を機会として,ルーマニアに残されている,インド・ヨーロッパ語族の拡大・発展の跡を示す重要な遺跡と古い習俗を調査した。 古・中期インド語文献の読解には韻律の知識が不可欠であるが,当時の韻律は未だに十分解明されていない。韻律学によりパリ第3大学において博士号を取得した本研究者は,諸文献の分析により,インド韻律の基礎概念であるmatraの原義と発展に気づき,日本印度学仏教学会第23回学術大会において発表した。また古・中期インド韻律を概観する英語論文(A Survey of Indian Metres-From Vedicto Middle Indo-Alyan-)も準備している。 「奥田聖應博士記念論文集」に招待されて,これまでに行った本研究の成果の概要を,特に仏教とジャイナ教との出家に伴う髪と鬚の除去を中心にまとめて記述した。10月に原稿を引き渡し,現在,印刷中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度(平成22年度)の補助金交付内定が10月末であり当該研究の開始が半年遅れた。さらに同年度末の平成23年3月11日の東日本大震災および度重なる余震により研究機関および自宅の書架・図書が何度も崩壊し,研究環境の再整備に多大な労力と時間を要した。鉄道・飛行機等の交通機関も途絶し,必要文献を収集するための出張の延期を余儀なくされた。平成23年6月からほぼ通常通りの研究を行える状況となり,精力的に研究を進め,国内外の学会で発表し,論文を執筆した。しかし同年11月に急病のため手術し2ヶ月入院したため,国際ヴェーダ学会,日本印度学仏教学会において発表した論文の出版を延期した。その後,順調に恢復し,研究を再開している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように,予期せぬ天災と手術のために当初計画よりも研究の進行がやや遅れているので,今後は文献の収集と検討の遂行に全力を注ぐ。資料の重要度により時間と労力の配分を適切に行うことに留意する。また資料のデータベース化の作業を促進するために,必要な機器を購入し,入力に学生等の助力を得る。年度後半には包括的な全体像をまとめる作業に入り,最終的な出版を目指して原稿を準備する。
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