2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520053
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Research Institution | Nishogakusha University |
Principal Investigator |
種村 隆元 二松学舎大学, 国際政治経済学部, 非常勤講師 (90401158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永ノ尾 信悟 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (40140959)
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Keywords | インド哲学 / インド密教 / 葬儀 / ムリタスガティニヨージャナ |
Research Abstract |
(1)平成22年度は研究会においてインド密教の葬送儀礼を規定する『ムリタスガティニヨージャナ』の校訂テキストを検討し,テキストの精度を開けることができた.また,『ムリタスガティニヨージャナ』の前半部を構成する「死者蘇生儀礼」は,『秘密集会タントラ』第14章に見られるローチャナーの観想法にもとづいているが,その内容はジュニャーナパーダ流に属するとされる『秘密集会タントラ』の諸註釈文献の内容に近接していることが判明した. (2)『ムリタスガティニョージャナ』に言及される輪廻の主体としての「識(jnana)」は「真っ赤な(surakta)」という形容辞を伴うが,これは経血・妊娠を示唆するとされる.この点に関連して,(a)「識」と密接に関連する概念である「中有(antarabhava)」が『倶舎論』によれば「ガンダルヴァ(gandharva,半神半人的存在)」とも呼ばれること,(b)『法蘊足論』等では「ガンダルヴァが父母交合の場にいること」が受胎の一条件とされることを確認した.「識」の調査に際しては「中有」の文脈も今後考慮に入れるべきかと思われる. (3)ヴェーダ文献の葬送儀礼の最も古いものは、長い期間にわたって行われるサットラといわれるソーマ祭式で参加者のだれかが死亡した場合に、償いの儀礼として記述されている。そのすべての記述を入力、分析した。それぞれのヴェーダの伝承に属する代表的な葬送儀礼の5つの儀礼と、『ガルダ・プラーナ』の記述を入力、分析した。『ガルダ・プラーナ』の記述より、死体の火葬と遺骨の処理という主要な要素のほかに、死者に対する死の直後から1年間のさまざまな機会に行われる供養行為が付加されていること、その形式が現在にまで存続していることが判明した。
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Research Products
(4 results)