2010 Fiscal Year Annual Research Report
『八千頌般若経』の総合的研究--漢訳古訳とガンダーラ語写本の比較研究を中心として
Project/Area Number |
22520054
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
辛嶋 静志 創価大学, 国際仏教学高等研究所, 教授 (80221894)
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Keywords | 仏教文献学 / 仏教漢語 / 般若経 / 支婁迦讖 / 初期大乗仏教 |
Research Abstract |
平成22年4月にベルリン自由大学のHarry Falk教授を創価大学に招聘し、パキスタンで新しく発見された紀元後一世紀に遡ると推定されるガンダーラ語『八千頌般若経』写本を一緒に解読した。その結果、この写本が紀元後179年に漢訳された支婁迦讖訳『道行般若経』に内容的に類似し、さらに後者の原語が梵語ではなくガンダーラ語の可能性があることが分かった。これら共同研究の成果は平成23年度中に英文で発表する予定である。 また、主として支婁迦讖訳『道行般若経』と、その異訳である支謙訳『大明度無極経』・竺佛念訳『摩訶般若鈔経』・鳩摩羅什訳『小品般若経』で使われている「わたし」「あなた」など基本語の変化から漢語の変遷を示した「早期漢譯佛典的語言研究-以支婁迦讖及支謙的譯経対比爲中心」という論文を中国で出版した。 さらに、年度末には、支婁迦讖訳『道行般若経』の校注本、A Critical Edition of Lokaksema's Translation of the Astasahasrika Prajnaparamita(586頁)を出版した。この校注では、句読点や様々な記号を使うと同時に部分的に英訳して、この大変難解だが、同時に非常に重要な漢訳に対する筆者の解釈を示した。一方で、この支婁迦讖訳と他の漢訳六種と梵本・チベット訳を一句一句比較して、最古の般若経経典『八千頌般若』における増広・削減・変化・改訂の跡付けを試みた。その結果、古いversions(即ち、支婁迦讖訳・ガンダーラ語写本・支謙訳・竺佛念訳・鳩摩羅什訳・玄奘訳第五会)は新しいversions(即ち、玄奘訳第四会・施護訳・梵本・チベット語訳)に比べると簡潔であること、また慈悲に関する記述が古訳(支婁迦讖訳・支謙訳・竺佛念訳)に概して欠けるのに対して、後のものになるほど詳しくなることなどが分かった。
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Research Products
(3 results)