2011 Fiscal Year Annual Research Report
社会科学との関連におけるキリスト教自然神学の再構築―環境論と経済学を焦点として―
Project/Area Number |
22520061
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
芦名 定道 京都大学, 文学研究科, 教授 (20201890)
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Keywords | キリスト教 / 自然神学 / キリスト教環境論 / 聖書の経済論 / トレルチ / 初期キリスト教 / 韓国キリスト教 / ウェーバー |
Research Abstract |
2011年度における本研究の成果としては、次の点が挙げられる。 まず、2011年度の中心的課題であった、キリスト教思想と社会科学との関係をめぐる理論的基盤の解明であるが、キリスト教思想研究と社会学との接点となる、初期キリスト教の社会学的研究とキリスト教思想における社会教説とについて、集中的に文献の検討を行い、いくつかの重要な知見を確認することが出来た。扱われた文献は、家族、経済、国家などをめぐる各時代のキリスト教の社会教説を論じた、トレルチやウェーバーらの古典的研究から、現在の研究動向まで広範に及んだ。 特筆したいのは、キリスト教思想と社会科学との相互の積極的な関連性を可能にする「自然神学」の中心に、現代の聖書学を位置づけることができるという点である。伝統的な自然神学が聖書の創造論と自然学(自然科学)との相互連関を可能にするものとして展開されたことは、社会科学との相互連関を考える場合でも参照すべきポイントであり、2011年度の研究により、現代の聖書学による初期キリスト教の経済論や家族論の解明が、社会科学との諸動向と積極的な関連づけ得るものであり、実際そのように研究が展開しつつあることが確認された。また、環境論に関しても、聖書学が焦点になることが明らになった。 次に研究資料の収集や諸研究者との情報交換であるが、2011年度は、韓国から研究者を京都大学に招く機会があり、そこで集中的な情報交換を行うことができたので、当初予定していた韓国での研究調査は中止した。研究調査は、2012年度に実施することになる。また、本研究代表者が主催する研究会(「近代/ポスト近代とキリスト教」「アジアと宗教的多元性」)における共同研究も予定通り行われ、その研究成果は、すでに2011年度の研究報告書として公表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度の交付申請書に記載の研究計画は、研究の中心点を現代政治思想に関連性から聖書学と社会教説の検討に移したこと、韓国での研究調査の代わりに来日の韓国研究者と共同研究を行ったことなど、いくつかの変更点が生じたが(理由の一つは、研究費が全額交付されるかが当初不透明であったことである)、理論的分析においても、また資料収集などに関しても、研究計画は遅れることなく、進めることができた。それは、「13.研究発表」の欄に記載の成果から確認できるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題も、2012年度には最終年を迎え、これまでの研究成果を集約し、さらに次の研究計画を展望する段階にさしかかっている。今後は、資料収集などにも継続的に取り組むものの、研究課題に関していかなる研究成果が明らかになったかについて、特に「キリスト教自然神学の再構築」という点を中心に、理論的方法論的な観点から分析とまとめを行いたい。
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Research Products
(5 results)