2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520071
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
今 義博 山梨大学, 教育人間科学部, 教授 (30115315)
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Keywords | 否定神学 / 肯定神学 / 新プラトン主義 / キリスト教 / 神秘主義 |
Research Abstract |
本研究の目的は、西洋における否定神学の源流の諸相を明らかにし、それらの源流から否定神学思想が形成、確立、展開される歴史的過程をクザーヌスに至るまで明らかにすることにある。 平成22年度の実施計画は、否定神学の源流をユダヤ教の伝統、古代ギリシア哲学、アレクサンドリアのフィロン、グノーシス主義、使徒パウロの5つに分類して、それぞれの思想の特徴を明らかにするとともに、それぞれの源流が否定神学とどのような関係にあるか、また諸源流の間の関係などを解明するものであった。しかし、本研究課題は正規の時期よりもかなり遅れて追加採択されたものであったため、研究の開始も遅れた。そのため特にグノーシス主義とパウロの否定神学思想の解明は十分行き届かなかった。その遅れは次年度において取り戻すつもりである。 アレクサンドリアのクレメンスの否定神学思想は本研究のまだ先のテーマではあるが、すでにH.F.HaggがClement of Al exandria and the Beginings of Christian Apophaticism(Oxford 2006)で、アレクサンドリアのクレメンスが否定神学の創始者であるという新しい見解を学界に提示しており、この新説は本研究テーマの中心に直接かかわる非常に重要な問題でもあるので、上記の研究と同時並行して、平成22年度にこの学説の妥当性をその内容の細部に至るまで吟味検討することも行った。その最終的な結論はまだ出ていないが、現段階ではHaggの説は概ね妥当なであろうと思っている。 平成22年度内に遂行された研究の成果に基づいて、現在、論文を執筆中であり、それは平成23年度中に学会誌で発表される予定である。
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