2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520071
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
今 義博 山梨大学, 教育人間科学部, 教授 (30115315)
|
Keywords | 否定神学 / 肯定神学 / 新プラトン主義 / キリスト教 / 神秘主義 |
Research Abstract |
昨平成22年度は、時期的に遅れて追加採択されたため研究の開始が遅れ、特にグノーシス主義とパウロの否定神学思想の解明は十分行き届かなかったので、平成23年度にその遅れを取り戻すべく努め、それは概ね達成された。平成23年度の本来の計画は、中期プラトン主義において初めて否定神学が概念的に規定され、方法論として明確になったことをヌメニオスとアルビノスにおいて明らかにし、さらにプロティノスとプロクロス等の新プラトン主義において否定神学が確立される過程とその内実を解明することであった。これらの計画のうち中期プラトン主義における否定神学の成立を跡づけることができたが、資料の不確定さもあって、細部にわたる考察には改めて課題も見出された。しかし中期プラトン主義が新プラトン主義の祖プロティノスに影響を与えたことは資料の上でも思想内容の上でも確認できたし、またその影響にもかかわらずプロティノスの否定神学が彼の独創的な哲学の中で独自の深みを持っていることも確認できた。平成23年度の研究のもう一つの柱であるプロクロスについても、特に『パルメニデス注解』における否定神学がプロティノスの否定神学に較べて理論的により精緻になり、プロクロスの形而上学と密接に関連していることが解明できたし、さらにプロクロスの否定神学がキリスト教の思想家偽ディオニュシオス・アレオパギテスの否定神学に影響を与えていることを具体的に明らかにすることができた。ただ、新たな課題として新プラトン主義のうち初期のプロティノスと後期のプロクロスの間を結ぶ線をより詳細に解明する必要を感じた。 以上の研究成果は拙著「キリスト教神秘主義の源流と架橋-偽ディオニュシオス・アレオパギテスとエリウゲナ-」(『イスラーム哲学とキリスト教中世III』pp.173-209)に発表された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の平成22年度は追加採択のために研究がやや遅れたが、次年度の平成23年度にはそれをほぼ取り戻すことができた。平成23年度の研究のうち、ヌメニオスとアルビノスについては原典資料も少ないことや、本邦はもちろん世界的にも研究の蓄積が少ないため、予定以上に研究に手間取ったが、プロティノスとプロクロスについては順調に研究を進めることができ、全体としてはおおむね順調に研究を進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進は予定通り行うつもりである。ただ、本研究課題に関連した分野は最近、発表される論文や専門書が予想以上に増えていて、収集した資料の読解・整理を予定通りには進めにくくなったので、当初は予定していなかった研究への協力(資料整理)者を雇用して研究の進行をはかった。本年度もそういう対応をして研究の進行を維持したい。
|
Research Products
(1 results)