2012 Fiscal Year Annual Research Report
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22520071
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
今 義博 山梨大学, その他部局等, 名誉教授 (30115315)
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Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2015-03-31
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Keywords | 否定神学 / 肯定神学 / 象徴神学 / 神秘神学 / 新プラトン主義 / 教父哲学 |
Research Abstract |
本研究は、平成24年度はキリスト教教父における否定神学の研究をテーマとして行われた。その研究は具体的にはアレクサンドリアのクレメンス、エイレナイオス、オリゲネス、ナツィアンゾスのグレゴリオス、ニュッサのグレゴリオス等のキリスト教教父たちの否定神学に関わる諸テキストを分析して、それぞれの否定神学の諸特徴について研究を行った。その結果、これら初期の教父たちの否定神学の思想にはプロティノスの影響が広く認められ、改めてプロティノスの新プラトン主義哲学の歴史的役割の大きさが確認された。のみならず、キリスト教教父たちがプラトンやアリストテレスやプロティノスなどのギリシャ哲学の範囲を超えた、キリスト教独自の偶像禁止という命題への取り組み、反グノーシス主義の展開とその他の護教的活動、キリスト教的救済史の理論的根拠づけの努力、ギリシャ哲学とは異なる独自宗教としてのキリスト教についての形而上学的思弁などの営みなどを通じて、否定神学に新しい独自の思想要素を付け加えたことも確認できたし、またそれが平成25年度の研究テーマである偽ディオニュシオス・アレオパギテスの否定神学につながる見通しも得ることができた。否定神学の歴史の中でキリスト教の登場が果たした重要性を確かめることができたことは意義深いことであった。いずれその研究成果はまとめて発表したいと考えているが、研究成果の一部は平成24年度中に学会で発表することができた。 しかし平成24年度に行った研究のうち、アレクサンドリアのクレメンスとエイレナイオスとナツィアンゾスのグレゴリオスの否定神学については年度内に必ずしも十分な研究がなされなかった。この点については研究計画が過大であったと反省している。それで、平成25年度の前半まではその研究の不足を補うべく努めるつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の本研究は概ね順調に行われたと考えるが、しかし必ずしも計画通り十分には遂行されなかった。その理由は、特にアレクサンドリアのクレメンス、エイレナイオス、ナツィアンゾスのグレゴリオスの否定神学に関する研究文献が必ずしも想定通りには入手できなかったことにもあるが、研究計画自体がやや過大であったことにもあると反省している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の進め方としては、平成25年度の研究は計画通り進める一方で、現在までの達成度の不足は平成25年度の前半で挽回したいと考えている。 平成25年度は偽ディオニュシオス・アレオパギテスの否定神学については特に否定神学と肯定神学・象徴神学との関係について理論的により深い究明を試みると共に、その関係は例えばフランスのサン=ドニ修道院の建築という具体物において表現されている可能性があると思われるので、サン=ドニ修道院の建築を構想したシュジェールの思想とその建築そのものについても研究したいと思っている。 また偽ディオニュシオスの否定神学を擁護・受容・継承した証聖者マクシモスの否定神学にどのような独自性があるのか、マクシモスは否定神学をキリスト教救済史にどのように応用したのかという点などを明らかにしたいと考えている。
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Research Products
(2 results)