2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520071
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
今 義博 山梨大学, その他部局等, 名誉教授 (30115315)
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Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2015-03-31
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Keywords | 否定神学 / 肯定神学 / 新プラトン主義 / キリスト教 / 神秘主義 / 象徴神学 |
Research Abstract |
平成25年度は5~6世紀の偽ディオニュシオス・アレオパギテスと7世紀の証聖者マクシモスにおける否定神学を、彼らにおけるその他の諸神学との関係を考察しながら、研究した。 偽ディオニュシオス・アレオパギテスは歴史上初めて否定神学・肯定神学・象徴神学・神秘神学などの名称を与え、それらの諸神学の間の関連を明示してキリスト教神学を体系化した人物で、キリスト教における否定神学(およびその他の諸神学も含めて)の確立者であり、以後の西洋の否定神学に対して絶大な影響を与えたし、現代においても強い影響を与え続けていて、否定神学の歴史上最も重要な存在である。それゆえ、平成25年度の研究は本研究のピークを成すものと言うことができる。幸いに現在では偽ディオニュシオスの著作の信頼できるギリシア語原本の校訂本があり、それに基づく英訳と独訳もあり、それらにより平成25年度は偽ディオニュシオスの全著作を通して彼の否定神学について考察し、ほぼ所期の目的を達成できた。 さらに偽ディオニュシオスの諸神学を継承し、それらを独自に救済史に適用して、それら諸神学がキリスト教世界に定着・普及するのに大きく貢献したのは7世紀の証聖者マクシモスである。平成25年度は偽ディオニュシオスと並行して否定神学を中心にマクシモスの思想を研究した。肝心のギリシア語原本の新しい校訂本がいまだに乏しいため、マクシモスの原本の解読は困難を極めたが、概ね目標は達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画の柱は偽ディオニュシオス・アレオパギテスと証聖者マクシモスの否定神学を研究することであった。そのうち偽ディオニュシオスの研究については計画通り所期の目的を達成できた。しかしマクシモスの研究についてはミーニュ版のギリシア語原本の校訂と印刷が良好でなく、読解に難渋したが、概ね所期の目的を達成できた。しかし最近著されたマクシモスに関する研究書を読解する時間が足りなかったので、偽ディオニュシオスの研究に比べるとマクシモスの研究には若干不満が残った。そこで、平成26年度の前半までマクシモスに関する研究書の読解を継続したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は本研究課題の研究計画の最終年度であるので、平成26年度に計画されている研究を推進するとともに、これまでの実行してきた本研究全体を総括することも行いたい。 平成26年度の研究計画のうち、エリウゲナの研究はこれまでの蓄積があるので、シャルトル学派、トマス・アクィナス、マイスター・エックハルト、クザーヌスの研究に重点を置くこととし、年度前半はシャルトル学派とトマス・アクィナスの研究に、年度後半はマイスター・エックハルトとクザーヌスの研究に割り振りたい。 また年度全体を通して、昨年度までの研究成果を論文にまとめる努力も合わせて行いたい。
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