2011 Fiscal Year Annual Research Report
栄西像の見直しを起点とした密教と禅―日本禅宗成立史の再検討―
Project/Area Number |
22520072
|
Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
米田 真理子 神戸学院大学, 法学部, 准教授 (00423210)
|
Keywords | 栄西 / 禅宗 / 密教 / 身体論 / 五臓論 / 仮名法語 |
Research Abstract |
本研究は、栄西の活動と思想における密教と禅との関係を、文献資料を中心に検証し、明らかにすることを目的としている。しかし、栄西の密教に関する著作は未紹介のものも少なくなく、そのため、新出資料を含む著作の整理および紹介から始めなければならず、23年度もそれ以前より継続してきた翻刻作業を行った。さらに最晩年の著作『喫茶養生記』を密教史に位置づけるべく、身体論という視点からのアプローチを試みた。また、禅を軸とする栄西像形成に関する文献の分析も進めている。 栄西の活動は、鎌倉時代以降に日本の密教世界で禅が享受されていく過程の最初段階に位置づけることが可能であり、その内実を明らかにすることは、当該期の仏教思想史を再検討する意義を持つ。 以上の目的に基づき、具体的にはつぎの(1)(2)を中心に研究を実施した。 (1)栄西の思想形成に関する研究 1.籍叢刊第一巻『栄西集』(臨川書店)の刊行を目標に、所収する栄西の著作、真福寺蔵『改偏教主決・重修教主決』、同『諸秘口決』、叡山文庫蔵『胎口決』、西本願寺蔵『釈迦八相』の原本調査および翻刻の整理を行った。 2.栄西が五臓論五位論に関する問題意識を持ち続けたことを、『喫茶養生記』を端緒に、『菩提心論口決』『改偏教主決』『隠語集』などの著作を用いて考察し、13th the European Association for Japanese Studiesにおいて、「成熟する身体-密教僧栄西の五位論-」と題して研究発表を行った。さらに、大東急記念文庫所蔵『秘宗隠語集』の調査を行った。 (2)日本初期禅宗における密教と禅との関係-仮名法語集の調査研究を中心に- 1.真福寺所蔵『初期禅宗法語(仮題)』および、同寺所蔵の聖一派安養寺流関係資料の調査研究を行った。聖一の弟子である無住の著作『聖財集』について、伝本の調査を行い、天理図書館所蔵本の翻刻をした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度中の出版を予定していた禅籍叢刊の刊行が遅れている。理由は、収録文献に原本の補修が必要なものがあるが、それらを出品する平成24年開催の展観(「大須観音展」於名古屋市立博物館)とのスケジュールの調整により、補修の時期が当初の予定より遅れたことがあげられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、著作の分析を基盤とする研究であり、その前提となる著作の翻刻・紹介の作業に、ようやくの目処がたった。そこで、今後はそれらを活用しつつ、内容の検討に移行していく。特に身体論という視点から、五臓論五位論が栄西の思想の中でどのような展開をみせたかについて、同時代の文献との比較、および円爾へ影響を検証し、論文を作成する。
|
Research Products
(4 results)