2012 Fiscal Year Annual Research Report
先駆的共生思想の日英比較研究ーエドワード・カーペンターを中心にー
Project/Area Number |
22520075
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Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
稲田 敦子 聖学院大学, 人文学部, 教授 (10017585)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 共生思想 / 内発的発展論 / 近代文明批判 / エドワード・カーペンター / 煙害問題 |
Research Abstract |
本研究の目的は、比較思想史の観点から、人類の普遍的課題である共生の問題を先駆的に提起しながらも、これまで近代思想史上であまり光の当てられていなかったいわば思想の地下水脈ともいえるエドワード カーペンターおよび石川三四郎に焦点を当てて掘り起こす試みである。両者の共通の問題意識は、社会総体とその中での自己を、自然を射程に組み込むことにより、解決の糸口を探ろうとするものであった。 平成24年度では、共生思想の先駆的系譜に位置づけられるエドワード・カーペンターの思想的基盤を転換期のイギリスの社会状況およびラスキンの固有価値論から検討することを目的として論稿をまとめ、『聖学院大学論叢』第25巻2号に掲載した。この論文では、研究計画であげたカーペンターの第一次資料をイギリスのケンブリッジおよびカーペンター文庫で収集し、論文の基盤として活用した。カーペンターは、20世紀初頭のイギリスで社会的調和論の実践をめざした組織であるFellowship of the New Life の中心的存在としてその活動を担いなから、彼独自の“new life” の展望を求め普遍的価値と関わる主体形成および社会倫理の問題を模索していったのである。 カーペンターの問題意識は、人間存在の精神的基礎としての共同性をめぐる領域において「機能ー役割」的関係から「実体ー人格」的関係への再生の可能性を探る試みの一つと 考えられる。このことが、近代日本で「土民生活」思想を提唱した石川三四郎に大きな影響を与えた。本年度は、本研究の最終年度であり、カーペンターと石川の思想的接点の主要な論点を検討したが、それは人間的自然の全体性の回復を基礎とした「共同の生」の覚醒と成長を自然との相互媒介性を進める中で推進されたものであり、現代における普遍的課題を射程に入れているといえよう。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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