2011 Fiscal Year Annual Research Report
自治国家は形容矛盾かとの問いの解明――シュタイン自治理論の研究を通して
Project/Area Number |
22520079
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
柴田 隆行 東洋大学, 社会学部, 教授 (20235576)
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Keywords | 自治 / 国家 / ローレンツ・フォン・シュタイン / グナイスト / 山縣有朋 / 社会 |
Research Abstract |
明治期日本の憲政と行政に多大な影響を与えたとされるローレンツ・フォン・シュタインとルードルフ・フォン・グナイストは、青年期から晩年まで密接な学問的かつ私的交流関係にあったことが、彼らの往復書簡の解読によって明らかになった。 わが国では、自治と言えば地方自治のことだと即座に連想されるが、それは、日本を「国家」として早期に確立すべく奔走した伊藤博文や山縣有朋らによる政治的な思惑の所産であり、彼らがその理論的根拠としたシュタインとグナイスト自身は、しかしながら、山縣らが強く警戒し拒否した、「自治国家」構想の持ち主であった。そのことは、彼らの著作を精読すれば明らかであるが、それを具体的な政治状況のなかでどのように実現すべきかについて苦心した様子が彼らの書簡からも明らかになった。 今回、グナイストの書簡を調べるなかで、彼の長年の友人であるミッターマイアーの息子が、アメリカのフランシス・リーバーの自由自治理論をドイツ語に翻訳し、グナイストもリーバーの自治理論に注目していることがわかった。リーバーと言えば、明治期日本で最初に紹介された欧米の自治理論の著者であり、山縣らが最も警戒した自治国家思想の持ち主である。シュタイン、グナイスト、伊藤博文、山縣有朋にリーバーが加わったことで、明治期日本の自治理論解明の鍵が見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画は順調に進み、当初計画以上に進んだ面もあるが、研究成果を公開すべく書いた論文を掲載した学部紀要が予算不足で連載できず、それによって他の研究者からの助言が一部しか得られなかった点が残念。
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Strategy for Future Research Activity |
明治期日本で改釈されたシュタインとグナイストの自治国家構想を、彼らが試みたイギリス、フランス、ドイツの実態比較研究の面から検証する。 前年度新たに明らかになった、アメリカのリーバーとグナイスト、シュタイン、山縣有朋という思想ラインを解明することで、明治期日本の自治理解の特色を鮮明にする。 研究最終年度であるため、これまでの研究を集約して、著書として公刊すべく、論文を整える。
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Research Products
(2 results)