2012 Fiscal Year Annual Research Report
記憶の継承と可傷性の倫理──アルゼンチン人権運動への思想的アプローチ
Project/Area Number |
22520081
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
林 みどり 立教大学, 文学部, 教授 (70318658)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 記憶 / 暴力 / 人権 / アルゼンチン / ラテンアメリカ(中南米) / 強制失踪 / ポスト軍政 |
Research Abstract |
当該研究は、アルゼンチンの人権運動とその戦略を分析することを通じて、①身体の可傷性を媒介とした新たな記憶の継承可能性、②二項対立的な歴史認識への根源的批判、③〈近代的な自律的主体によって構成される公共圏の再構築〉という民主化モデルへの批判、④親密圏の導入によるオルタナティヴなデモクラシー論の可能性、を明らかにすることを目的としている。 平成24年度は、1.前年度に震災の影響で実現できなかった現地調査の代替策として予定していたEATIPの調査報告書の資料を分析、2.暴力の記憶の継承可能性の分析を、同様に軍事独裁政権による人権侵害を経験した他のラテンアメリカ諸国との比較において行い、3.国家財政の逼迫に伴う教育予算削減を受けて、中高等学校の人権教育プログラム自体がカットされることになってしまったため、実地調査はできなくなったことから、IEMや他のNGO組織に関する、現政権のもとでの人権運動諸組織に対するコオプテーション政策の深化の分析を行った。その結果次のことが明らかになった。 第1に、コオプテーション政策のもとで、一方では伝統的な人権諸組織主導型の"Memoria"(一般にアルゼンチンでは大文字の「記憶」と単数で記される)の再生産現象が、他のラテンアメリカ諸国に比して突出した仕方でアルゼンチンにおいて現出している反面、地域住民による草の根運動のような、支配的な歴史語りには回収しきれない複数の〈記憶〉"memorias" は、経費削減等により管理(抑圧)される傾向がより顕著になっていること、第2に、EATIPのような自律組織は、公的な「記憶」の再生産現場から離れ、新自由主義下で新たに現れつつある社会的暴力の記憶への関与を強めていること、第3に、伝統的な人権組織における「記憶」の再生産とその「形骸化」ないし「陳腐化」に対する批判が展開されつつあることである。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(2 results)